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二人をより”魅力的”に。 デュヴァル=ルロワ日本公式アンバサダー ドゥヴィッレ麻由良さん 「今、きもので輝くひと」vol.1

二人をより”魅力的”に。 『デュヴァル=ルロワ』日本公式アンバサダー ドゥヴィッレ麻由良さん 「今、きもので輝くひと」vol.1

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フランス人の夫とともに、格式あるシャンパーニュブランドの日本公式アンバサダーを務めるドゥヴィッレ麻由良さん。ヨーロッパの文化を伝える場にあって、純和風にこだわらず、華やかな世界観を彩るように着物を着こなします。そんな麻由良さんに、着物への思いをうかがいました。

自由な発想で、伝統柄をモダンに着こなす

麻由良さんとアントニーさん

フランス人のパートナー、アントニーさんとともに、シャンパーニュブランド『デュヴァル=ルロワ』の日本公式アンバサダーを務めるドゥヴィッレ麻由良さん。パーティーやイベントの場では、ときに洋装、ときに和装でお客さまを迎えます。

特に着物をお召しの際のアントニーさんとのコーディネートは和洋の垣根を超えた調和をみせ、とても華やか。

シャンパーニュ
『デュヴァル=ルロワ』のコンセプトは、女性的な繊細さと気品

そんな麻由良さんに着物の話をうかがいたいと、上野駅からほど近い閑静な街並みに佇む「宋雲院」を訪ねました。

宋雲院の看板
本堂に向かって佇む麻由良さまの後ろ姿

臨済宗大徳寺派の寺院である宋雲院は、麻由良さんの生家。
正面から真っ直ぐ奥に見える本堂の扉は漆塗りの仕上げに大きな家紋がほどこされ、思わず吸い込まれそうになる荘厳さとともに、なぜかモダンアートのような新鮮さも感じられます。

「ここの本尊は虚空蔵菩薩。漆の守りご本尊なんですよ」

こう話しはじめる麻由良さんの装いは、遠目には無地と見まごう江戸小紋の万筋に、牡丹唐草文様の漆箔(うるしばく)の帯を合わせて。

漆箔の帯
『澤屋重兵衛 漆 彩美唐花』

ご本尊とのゆかりから選ばれた帯の「漆箔(うるしばく)」とは、和紙の上に漆をひき裁断してつくった糸のこと。
絹糸とはまた違った艶めきがあり、琥珀の帯留めがさらに上品なきらめきを添えます。締めていると、なんとほんのり漆の香りがお部屋に漂うとか!

漆箔の帯と琥珀の帯留め

万筋は、江戸小紋師・故 藍田正雄さんによるもの。彫刻型は伊勢型紙「縞彫」人間国宝・故 児玉博さんです。
伝統的な柄を選びながらも、黒の長襦袢に黒の帯揚げと意外性のある小物を合わせ、全体としてとてもモダンな印象を演出するコーディネート。手元には大きなハートのリングをつける遊び心も。

黒の帯揚げ

「黒の帯揚げは、実は喪服用なんです。かつては普段使うことに躊躇していたんですが、フランス人の夫は固定観念がありませんから、『関係ないでしょう?黒もひとつの色。ここは黒のほうが合うんじゃない?』と。そこで私の思い込みも解けて、以来、ヘビーローテーションになりました」

「黒無地の長襦袢も珍しいかもしれませんが、これは赤の着物に合わせた特注品です。こちらもとても合わせやすくて気に入っているんですよ」

黒の長襦袢
イタリアンカットの草履

足元は、ひと目で惚れ込んでしまったという「ぜん屋」のイタリアンカットの草履を合わせて。すらりと細身の台が、着姿全体をスタイリッシュに演出。

赤いルージュとネイル、リングのコーディネート

赤いハートのリングがチャーミングな手元のネイルは、鮮やかな赤。ルージュとネイルは、秋冬はレッド、春夏はフューシャピンクと決めているのだそうです。

「フランスの女性の60%は、赤いネイルをしているという話を聞いたことがあるんです。赤は成熟した女性のための色。主人と二人でコーディネートをする際に、私らしい女性らしさをいちばんアピールできる色だなと、自分でも思うんですよね」

着物は伝統的な衣装であり、席のTPOに合わせた着こなしも大切です。一方、工夫次第で自分らしさを演出できる可能性にも満ちているのだと、麻由良さんの装いはあらためて感じさせてくれます。

二人が輝いて見える着こなしを

アントニーさんと麻由良さん

麻由良さんが今のように着物を楽しむようになったのは、アントニーさんのパートナーとして、ゲストをお迎えするようになってからだといいます。

着物のことを学んだのは、それより以前の20代の頃のこと。お茶を習うにあたって着物が着たいと、母親に頼んで教えてもらいました。
とはいえ、2003年にアントニーさんに出会いその3年後に結婚してからは、異なる文化で生まれ育ったアントニーさんとの生活を築き上げることに専念。10年ほどは着物からもすっかり遠ざかっていました。

二人がイベントで着物を着るようになったきっかけとなったのは、とある銀座の寿司店でのイベントでした。

「何を着ていくのか尋ねたら『スーツで行く』と。せっかくの和食イベントなのにそれじゃおもしろくないじゃない、と着物をすすめてみたんです。
断るかなと思ったんですが、意外にあっさりと『いいね、着よう』と。はじめて着物を着たのに、袂(たもと)をおさえたり歩くときに裾(すそ)をさばいたりと、なぜか着物の所作ができるのにびっくりしました。仕事をしているうえで着物のお客さまを見ることも多く、自然に身についていたんですね」

アントニーさんの着物姿

それ以来、夫婦でイベントに出るようになってから、自然と麻由良さんも着物を着る機会が増えていきました。

麻由良さんとアントニーさんがシャンパーニュブランドのアンバサダーに就任するにあたって決めたキーワードは、英語でいう「Glamour」、フランス語では「Charme」。「魅力」という意味です。

二人をより「魅力的に」見せるため、パートナーシップを象徴するような雰囲気づくりをファッションのコンセプトにしています。

「フランス人と日本人のカップルがシャンパーニュブランドのアンバサダーを務めるにあたり、自分らしさを表現するため着物を選ぶ機会が増えていったのは、自然な流れでした。
アントニーが洋服を着ているときでも、色を合わせるなど統一感を出すように気をつけています。色が合っていないときは、ケンカして意思の疎通ができていなかったんだなと、写真を見ればすぐにわかりますよ(笑)」

美しく見える秘訣は「自分を愛すること」

庭に佇む麻由良さま

麻由良さんを見ていると、着物の着こなしもさることながら、立ち居振る舞いがとても上品で、それでいて型にはまらないチャーミングな個性が伝わってきます。

どうしたらそんなにステキな所作が身につくのでしょうか、と聞いてみると、少し意外な答えが返ってきました。それは「自分を愛すること」。

「立ち居振る舞いというのは、先生についてお勉強するだけでは、とってつけたような雰囲気になってしまうんです。そこから自分の身にしみこませるにはどうしたらいいか。
実は所作は、その人のメンタルが映し出されるものだと思うんです。気持ちが落ち込んでいるときに優雅な身のこなしをしようと思っても無理なんですね。あとは、”どれだけ愛されているか”なんです」

街を歩きながら見返る麻由良さま

「自分のことをどうでもいいやと思っていたら、所作もどうでもよくなる。自分のことをきちんと見て、気にかけてあげることが大切だと思います。そして自分を愛しているからこそ、周りから愛されていることにも気づくようになります。

そうすれば、自分がチャーミングに見える立ち居振る舞いがわかるようになってきますよ。私は写真を撮っていただくとき、いわゆるベーシックな着物の所作でおさまることはしないようにしています。少しS字のカーブをつけて女性らしさを出してみたり。

でも私と同じようにしても、その方がステキに見えるとは限りませんから。やっぱり自分をよく見てあげて、一番輝く所作を研究してみると良いですよ」

着物への好奇心を持ちつづける

麻由良さまの横顔

最後に、着物をこれから楽しんでみたいという方に伝えたいことについて聞いてみました。

麻由良さんの答えは「好奇心をもつこと」。

「言ってしまえば、着物は面倒なものです。汚してしまえば手入れは大変、雨の日には着られないから、その日の天気の移り変わりまで考えなければいけない。洋服のほうが楽ですから、誰かに言われたから着てみる、お友だちのまねをして着てみる、という程度では、やはり洋服に戻ってしまうと思います。

その面倒を引き受けてでも継続するには、なにより自分が着物に対して”どれだけ好奇心があるのか”というのに尽きると思います」

母親から、「箪笥から出し、箪笥にしまうまでが着物を着るということ」——着つけから手入れ、保管まですべて自分で責任をもって取り扱えない限りは着物を着る資格はない、と厳しく教えられたという麻由良さん。
「ヘアスタイルは自分で結うこと」も教えに含まれていたそうです。

気軽に着物をとは口にしませんが、これからも日本人のアイデンティティとして、着物は受け継がれていく文化だと考えています。

「私自身もそうでしたが、外国人をパートナーに持つと、海外の文化にウェイトをおく方が多いんです。でも一度外の世界に出て行ったからこそ、日本文化の良さに立ち戻ることもあるんじゃないかなと思います。

京都や浅草で、若い人が着物を着せてもらって楽しんでいるのを見ると、やっぱり着物も捨てたもんじゃないな、って思うんです。海外も見て、日本の良さも見て、それから着物をごくあたりまえに、自分らしく着こなしていってほしいですね」

障子の向こうに立つ麻由良さまの後ろ姿

※シャンパーニュ『デュヴァル=ルロワ』についてのお問合せは、セパージュ株式会社までどうぞ。

構成・文/伊藤宏子
撮影/五十川満

プレミアム銀座
シャンパンイベント

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