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”端午の節句(菖蒲の節句)” 刀を思わせる葉で邪気払い – 嵯峨御流「はじめましょう 花であそぶ節句」vol.2

”端午の節句(菖蒲の節句)” 刀を思わせる葉で邪気払い – 嵯峨御流「はじめましょう 花であそぶ節句」vol.2

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もともと節句の時期は季節の変わり目であり、病気が流行りやすい時期。それぞれの節句のお祝いは「厄除け・邪気払い」の意味合いが強かったのだと思います。のちに”端午の節句”を男児の節句としてからは、剣のように尖った菖蒲の葉が武士の持つ刀と似ているとして「菖蒲」が節句の花に定着しました。

“端午の節句”について

端午の節句のいけばな

今回は、”端午の節句”に飾るいけばなについてお話しいたします。

中国ではなぜか古来より五月を「悪月(あくげつ・あくづき)」といい、五月五日に厄払いのため蘭湯に入って邪気を払ったそう。
その後鎌倉時代の日本において、女官が菖蒲(しょうぶ)・蓬(よもぎ)などで兜(かぶと)の形を作り、天皇に献上したのが”端午の節句”のはじまりと言われています。江戸時代になると、武将姿の人形や刀・甲冑を飾り、男の子の出世を祈る節句になりました。

葉の直線的なラインを崩さないよう

”端午の節句”の花として嵯峨御流の伝書には、

「菖蒲と蓬の両草の匂いを聞けば空の毒気を請けざる故」

として、菖蒲と蓬を使ったいけばなが記されています。
もともと節句の時期は季節の変わり目であり、病気が流行りやすい時期。それぞれの節句のお祝いはそもそも、「厄除け・邪気払い」の意味合いが強かったのだと思います。

のちに”端午の節句”を男児の節句としてからは、「菖蒲の葉が剣のように尖っているさまが武士の持つ刀と似ている」として「菖蒲」が節句の花に定着したのでしょう。

直線的なラインを崩さないように

菖蒲(サトイモ科)には綺麗な花が咲かないので、いけばなで使うときには、菖蒲の葉に花菖蒲(アヤメ科)の花を取り合わせて使います。

今回は蓬は使わず、菖蒲・花菖蒲を使ってお生花(おせいか)をいけました。
男児の節句として飾ることから、葉の直線のラインを崩さないように男性らしくいけています。

※お生花(おせいか)とは、嵯峨御流のいけばな花態(かたい)のひとつです。
とても簡素な花姿ですが、その姿形は天円地方(てんえんちほう)の理にしたがって、天・地・人を表す形をしています。
基本的には一種の花材を使い三才格(さんさいかく)・五行格(ごぎょうかく)といわれる正式花態をつくります。

(↓ 前回”桃の節句”は「女性らしくいける」いけばなでした。「いけばな嵯峨御流とは」にも触れています。)

”上巳の節句(桃の節句)” 女性らしくいける桃のいけばな – 嵯峨御流「はじめましょう 花であそぶ節句」vol.1

今回は嵯峨御流の伝書に書かれているお約束からは少し離れて、桃の花は八重咲き、そして枝にはたくさんの花芽をつけたままですが、お生花(せいか)「内用」という形の上巳の節句のいけばなを活けてみました。桃を飾るときのちょっとしたポイントも、参考にどうぞ。

菖蒲(しょうぶ)と杜若(かきつばた)

菖蒲とよく似ている杜若

この時期、花菖蒲とよく似た花で杜若があります。
それぞれ背丈や自生する場所が異なりますが、実によく似ています。

一番分かりやすい違いは、葉の形状。菖蒲の葉の中央には盛り上がった葉脈がありますが、杜若にはなくつるりとしています。

前章のとおりいけばなでは、

花菖蒲は「男性らしく直線的に」

いけますが、反対に、

杜若は「葉を曲線的にためて(曲げて)女性らしくしなやかに」

いけます。

よく似た花ですが、いけ方で雰囲気が違ってくるのはおもしろいと思いませんか。

シルエットも女性らしい杜若
障子に映るシルエットも女性らしい杜若

生活に取り入れるポイント

生活にとりいれるポイント

では、端午の節句に「家庭で花を飾るポイント」をお伝えいたします。
端午の節句では「厄除けとして菖蒲・蓬を飾っていた」と記されていたことから蓬も飾りたいところですが、蓬だけでは味気無いので、ヨモギ科である菊を一緒に飾ってみてはいかがでしょうか。

アレンジを楽しむ

色味のある花を加えることで、華やかな印象になります。
花菖蒲の足元を小菊や枝ものでまとめると、バランスよく飾れます。

また、端午の節句に「菖蒲の葉を浮かべたお風呂に入る」習わしがありますが、こちらは「花菖蒲の葉」ではなく「菖蒲の葉」ですのでお間違えのないように。
菖蒲湯用の菖蒲は、花屋さんやスーパーで購入できると思います。

「花」にできること

「花」にできること

梅や桜の開花を楽しみにする人は多いと思いますが、日々の生活で、家に花を飾る習慣となると…なかなかない方がほとんどではないでしょうか。

そんな方々もきっと、節句を祝う習慣はあると思います。
男の子がいないご家庭でもぜひ「厄払い・邪気払い」として、今回ご紹介したような花々を飾ってみてはいかがでしょうか。
季節ごとの花が、いつもの空間を華やかに、そしてハッとするほど清浄なものにしてくれると思いますよ。

撮影/スタジオヒサフジ

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