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妻夫木聡さん×窪田正孝さん×大友啓史監督インタビュー『宝島』 「きもの de シネマ」番外編

妻夫木聡さん×窪田正孝さん×大友啓史監督インタビュー『宝島』 「きもの de シネマ」番外編

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大友啓史監督最新作『宝島』の公開に先駆けて、大友監督と主演の妻夫木聡さん、共演の窪田正孝さんに撮影裏話をお伺いしました。映画化への想い、互いのお芝居を振り返って、そして世界観を支える衣裳について――。お三方の語りをお届けします。

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2025.09.03

カルチャー

戦後の沖縄を描く、魂震える圧巻の191分!『宝島』 「きもの de シネマ」vol.69

原作のたぎる熱量をそのままに、撮る

ごきげんよう、椿屋です。

9月19日公開の『宝島』のご紹介に続き、今回は大友啓史監督率いる大友組から妻夫木聡さんと窪田正孝さんの登場です。

アメリカ統治下の沖縄で生きる主人公・グスクを演じた妻夫木聡さんと、彼の幼馴染・レイを演じた窪田正孝さん。

片や刑事、もう一方はヤクザ――それぞれが選んだ社会の中で、それぞれの想いを抱えながら、それぞれの手段と人脈を使って、行方知れずとなった地元の英雄・オン(永山瑛太)を捜し続ける20年間の人生を体現しました。

妻夫木聡さん×窪田正孝さん

――選考委員から満場一致で選ばれた第160回直木賞作品『宝島』(真藤順丈著/講談社刊)を映像化するにあたって、原作の印象や舞台となった沖縄への想いをお聞かせください。

大友啓史監督(以下、監督):原作には、多くの人が知らないアメリカ統治下の沖縄の不条理への反発力や反骨心が描かれています。優しくて穏やかという沖縄の人たちのイメージの裏にある、ああいった時代を乗り越えてきたからこその負けない気持ち、折れない心といったものが溢れている作品。原作に込められた熱量をそのままに映像化したいと思ったのが正直なところです。

妻夫木聡さん(以下、妻夫木):19年前に出演した『涙そうそう』(2006年/東宝)と同じコザの街を舞台とした作品に出られるのは、本当にうれしかったですね。撮影を機に仲良くしている親友もいますし、いままたこのタイミングで沖縄に関わることができて運命的なものを感じました。

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

窪田正孝さん(以下、窪田):自分は原作を拝読してなくて。基本的に、原作は読まないようにしているんです。役者にとっては台本がすべて。なので、原作のどこをトリミングして抽出されているのかといったことは知らない方がいいのかな、と。ただ、原作を読んでいなくても、企画書の段階からかなりの熱量を感じたので、たぎるようなメッセージを受け取って、どんなふうに具現化するんだろう?と思いつつ、大友さんだからやっちゃうんだろうなって(笑)

妻夫木:文字で書くと簡単なんだけどね(笑)

幼馴染を演じたふたり、お互いの印象は?

――プライベートでも交友のある妻夫木さんと窪田さんですが、ちゃんと向き合っての共演は初めてとのこと。お互いの印象について教えてください。

窪田正孝さん

妻夫木:窪田くんは、芝居に対しては本当に真摯な人なんですよ。

窪田:いやいやいや。

妻夫木:悪く言うと、役者バカってことなんですけど(笑)

一同:(笑)

監督:お互い様だよね(笑)

妻夫木:芝居しか見えなくなる人だからこそ、それが逆に信用できる。レイという難しい役を、そのまま突っ走ってくれたから、現場で脚本以上のことを求める監督の要望に応えたリアリティや説得力が生まれたと思います。

クライマックスの嘉手納基地でグスクとレイが対峙するシーンが台本だけでは想像しきれなかった芝居になったのも、レイとの歴史を感じた瞬間があったからこそ。僕が経験していないレイとの人生までも見えたような気がして、それって窪田くんがレイをやったからじゃないかなって。

窪田正孝さん

窪田:立場に関係なく相手に興味をもって接して、他人を大切にするからこそ、いつも周りにたくさんの人がいる。人から愛される妻夫木さんの人柄が、グスクという役にすごく反映されてるなって思います。

現場で妻夫木さんが一番大事な柱としての役割を担ってくれていたから、みんなが寄り添っていけた。その基盤があってこその『宝島』です。役者としても、人間としても、一緒にいて伝わってくるものがあって。自分はもうそこに全力で挑むことしかできなかったですね。それを監督が絞り出してくれたおかげで、ああいうふたりの決闘になったのかな、と思います。

衣裳は生き物。だから、ややこしい

――作品の世界観を構築するのに欠かせない衣裳について、どんなことを意識されていますか?

監督:常に、風を感じる衣裳にしたいと考えています。それは現代モノであっても同じで、登場人物と一緒に衣裳も動いてほしいから、実はサイズ感にはちょっとうるさいですね。生地を選んだり色を決めたりするのは衣裳部の仕事なんだけど、少し大きめなのか、やや小さめなのか、といったサイズに関しては裏でこそこそスタッフにささやいています(苦笑)。本作は、あの時代のまさに熱風のような風を感じさせる質量の衣裳を意識していました。

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

監督:物語の終盤でオンちゃんの衣裳が重要な役割を持つでしょ。そもそも着物って100年受け継いでいけるものだし、とくに琉球の衣裳はすごく丈夫だから。現場でも、20年経ったらどんなコンディションになるのかっていうことを話し合ったりしてね。その大事なポイントをベースに、あの衣裳を決めています。

風に晒されると布も擦り減っていくから、風を感じながらも、風を遮る岩場が必要だったりとか。衣裳もヘアも何もかもが、その場や時間と有機的に繋がっていくものなので、単体で答えを出さない。しかも、俳優たちが身にまとうことでどう見えるかも変わってくるから。(衣裳は)生き物だからややこしいんだよ(笑)

妻夫木:通常、映画の衣裳って全部が全部つくらないものなんですけど、今回は手づくりのものも多くて。僕の身体に合わせてつくってくれています。衣裳合わせだけでも3回以上やってますし。

窪田:やりましたねぇ。

監督:レイのもつくってた?

窪田:つくってましたね。

監督:革ジャンも?

窪田:あの革ジャンは、まさ江さんがどっからか持ってきて(笑)

――衣裳担当は、宮本まさ江さんでしたね! さすがです!!

監督:着物の生地もね、沖縄に入ってから探してきてるんですよね。50年、100年前に着ていたようなものを見つけてきたり。

妻夫木:すずちゃんが着ている服は、沖縄出身の出演者の方のお母様が実際に着ていたものをお借りしたものもあります。

妻夫木聡さん

――いまとなっては復元できないような生地感が素晴らしいなと思いながら拝見していましたが、なるほど、本物でしたか!

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ややこしい。だけど、映画は面白い

――どのシーンもインパクトとリアリティに満ちていましたが、監督にとって最も手応えのあったシーンを教えてください。

監督:またそんな無茶な質問を(笑)。撮影って長くて順番もぐちゃぐちゃだから、ポイントポイントで大事なシーンがあるんだよね。手応えや手触りのあるシーンを「ヤマ」って言うんだけど……。

最初はレイがヤマコに縋るシーン、次にグスクとオンちゃんのラストシーン。撮ってる順番は全然ラストじゃなかったんだけどね。そのあとが、クライマックスのグスクとレイの対峙シーンかな。それらの着地点がどういうものになるかで全体に影響するし、僕自身はあまり逆算はしないタイプだけど、ガイド的なシーンはやっぱりあって。そういうシーンは、ある種の旗印のようなものになっていく。そういう意味では、あのラストシーンが撮れたときには、僕の中にも、まだ見ぬ言葉がぐわーっと生まれていくのを感じましたね。

そういう力強いシーンを取っ掛かりにして肉づけされた結果、『宝島』という作品が形づくられていったと思います。撮影って、ガイドなき道なんだけど、ナマモノを撮っているからこそ面白いってのが、またややこしいんだよね(笑)

妻夫木聡さん

妻夫木:(そろそろお時間が……というスタッフさんの声を受けて)「ややこしい」がシメって(笑)

監督:ややこしいけど、面白い!だよ。

一同:(笑)

名刺
名刺
インタビュー冒頭、宣伝アンバサダーを務める妻夫木聡さんからいただいた名入りのカード(撮影:椿屋)

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