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ギャップがあった女君を振り返り! 「源氏物語の女君がきものを着たなら」vol.16(最終回)

ギャップがあった女君を振り返り! 「源氏物語の女君がきものを着たなら」vol.16(最終回)

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自分が着物を着る時には、出かける場所の目的や季節などを考慮してコーディネートしますが、「今日は紫の上の気分♪」というようにキャラクターの概念コーデを楽しむのも面白いと思います!

2025.03.26

まなぶ

自信に満ちた気丈な女君、雲居の雁 「源氏物語の女君がきものを着たなら」vol.15

まなぶ

3兄弟母、時々きもの

連載最終回は”ギャップ”に注目!

きものと読者の皆さま、こんにちは。tomekkoです。

昨年の大河ドラマ愛が爆発して描き始めた「源氏物語の女君がきものを着たなら」、全15回に渡りお送りしてきましたが、いかがでしたか?

まなぶ

源氏物語の女君がきものを着たなら

現代とは全く違う価値観、生活様式の中に生きる女性作家紫式部が、上下様々な社会を人間観察して描き出した壮大な物語。

どう考えても私たちよりも見られる世界は狭いはずなのに、不思議なことに現代にも「いるいる!」と共感できちゃうキャラクターの数々。千年経っても愛され読まれ続ける作品にはそれだけの理由があるんですね。

私はもともと歴史や古典が好き。……と言っても源氏物語はそんなに深掘りしたことがなく、幼少期に読んだ漫画のイメージを持ったまま学生時代に数種の現代語訳を読んだことがある、という程度でした。原文に至っては途中で挫折したクチで、受験対策で有名な部分を読み比べたぐらい。

なので今回、改めて1人ひとりの登場人物に焦点を当ててじっくり原文を読み返してみると、意外な発見の宝庫で、それはそれは楽しいひとときでした。

源氏物語の女君がきものを着たなら1

物語が愛され、演劇や二次創作にアレンジされていく過程でよりインパクトのある出来事や心情が強調されてしまったり、逆に、実は結構重要人物なはずなのに印象薄く描かれていた人もいたり……

途中からは私もできる限り先入観を捨てて、原文から改めて感じ取るように意識してみました。

ということで最終回では……

”とりわけ元の印象とギャップがあった女君”を振り返ってみましょう!

正妻・葵の上 VS 愛人・六条御息所

源氏物語の中でも大きな事件の渦中にありイメージが固定化されがちなのが、光源氏の正妻・葵の上と、生き霊となって彼女を呪い殺してしまう愛人・六条御息所ろくじょうのみやすんどころでしょう。

源氏物語の女君がきものを着たなら2

葵の上はお高く止まった面白みのないお嬢様……じゃなくて、ただただ親の取り決めで人気者の妻になってしまってどうして良いかわからない世間知らずであり、正解がわからないから「何もしない、言わない」という選択肢を取ってしまうタイプだったから夫婦の意思疎通がなかなかうまくいきませんでした。

機転が利いて軽妙なやりとりが繰り広げられる宮廷の女性たちに慣れた光源氏からしたらつまらない人なので、どうしても悪い評価になってしまい、その部分が切り取られて彼女のイメージになってしまっていたのですね。

2024.05.30

まなぶ

高貴な正妻、葵の上 「源氏物語の女君がきものを着たなら」vol.5

一方、まるでヴィランの扱いを受けている六条御息所もまた、本来の性格は真逆ぐらい違うこともわかりました。奥ゆかしく控えめで、世間から見た自分の立ち位置もよくわかっている。

2024.06.24

まなぶ

繊細で慎み深い、六条御息所 「源氏物語の女君がきものを着たなら」vol.6

目立ったことをして世間から悪評が立つのを誰よりも恐れているのに、恋心を抑えきれず時の人の愛人になってしまったこと、そして若い恋人の気まぐれに振り回されていることに罪悪感を持ち苦しんで、でもその辛い思いを誰にも吐露することができず、いよいよ生き霊になってしまうほど思い詰めていた……

子持ちの未亡人というと年齢もそこそこの人をイメージしがちですが、周りがより若いってだけで、この人だって20代ですからね。

一部だけを切り取らず全体をよく読むと、全然違う印象になる可哀想な2人です。

どちらも平安時代の貴族社会の中で生まれ育ち、自分の意思とは違う事情に苦しめられていました。

現代と違い、貴人は恋愛関係も衆人環視というのに、そのお相手は天下の光源氏なんだもの。

か弱くて儚い?夕顔

印象が違ったシリーズでは、夕顔は自分の中でもトップクラスに「あれ?全然違うやん!」な人でした。

2024.07.30

まなぶ

柔らかで洗練された気品、夕顔 「源氏物語の女君がきものを着たなら」vol.7

素性を明かそうとせず、あっという間にひと夏の夢がかき消えるように亡くなってしまったせいか「儚い」「弱々しい」「無欲で控えめ」なまるで妖精みたいな印象に描かれがちな夕顔ですが、よくよく彼女のライフスタイルや軽妙な言動、そして後年になって判明する隠し子を読み取っていくと全くのジャンル違いだということがわかります。

源氏物語の女君がきものを着たなら3

”遊び女”とまではいかないまでも、貴人専用の高級ホステスさんのような存在だったようで、それこそお姫様として型通りの対応しかできない正妻と高貴で気を遣う年上の愛人のご機嫌取りに疲れた光源氏(気の強い正妻を持つ頭中将も)が癒され夢中になったのも理解できる気が……

地味なのに正妻級!花散里

2024.09.26

まなぶ

光源氏からの”愛”を受け取る、花散里 「源氏物語の女君がきものを着たなら」vol.9

目立たないけど実はいい仕事してますね!?シリーズでは、やはり花散里はなちるさとが外せません。

源氏物語の女君がきものを着たなら4

紫の上、明石の御方とのような劇的な出会いも大恋愛も描かれず、容姿もお世辞にも良いとは言えない女君。ただ淡々と若い頃から晩年まで、光源氏の人生に寄り添っている人。そして光源氏にとって大切な場面ではいつも信頼して任されている。

女性としての幸せを求めすぎず、自分が手にできるだけの幸せに感謝して生きているうちにじわじわと株が上がっていき、いつの間にか正妻級に大切に扱われていた。地味だけどすごく人生の示唆に富む女君だなと。

下手に足掻かず自分にできることを地道に続けること、その中で得られたものに感謝する謙虚な生き方を守ることって、案外夢にも思っていなかった成功を手にする近道なのかもしれません。

2024.01.24

まなぶ

源氏物語のもう一人の主役、紫の上 「源氏物語の女君がきものを着たなら」vol.1

2024.05.30

まなぶ

つつましく賢い女性、明石の上 「源氏物語の女君がきものを着たなら」vol.2

一生現役な姿に好感。源典侍

ちょっと下品なギャグ担当だと思われていた源典侍げんのないしのすけも、よくよく追ってみると、こんなお婆さんになれたら幸せそう!と思わせてくれるキャラクターでした。

2025.01.22

まなぶ

奔放に自分らしい幸せを追い求める、源典侍 「源氏物語の女君がきものを着たなら」vol.13

いい歳して若いイケメンに入れ上げる……というと聞こえは悪いけど、「どうせもう歳だから……」「もう今更新しいことにチャレンジなんて……」と歳を理由に諦めてしまうよりもずっと良いかも。

生まれ持った気品と社会でもバリバリ働き実績を上げるキャリアウーマン、一生現役気分で元気でポジティブなおばあちゃん、いいじゃないですか!

源氏物語モチーフの”概念コーデ”で♪

と、このように筆者本人もとても学びが深まり自分の人生も色々と考えさせられたこの連載。そのキャラクターに合った着物を選んでみるのも楽しかったです。

自分が着物を着る時は出かける場所の目的や季節などを考慮してコーディネートしますが、「今日は紫の上の気分♪」というようにキャラクターの概念コーデを楽しむのも面白いと思います!

この連載はここまでとなりますが、毎月お読みいただきありがとうございました!また次の連載でお会いしましょう〜。

2024.12.23

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書にも、衣裳のような装いがある─ 書道家 根本知さん(前編)

2024.12.13

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