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親しみやすく可愛らしい、朧月夜の君 「源氏物語の女君がきものを着たなら」vol.3

親しみやすく可愛らしい、朧月夜の君 「源氏物語の女君がきものを着たなら」vol.3

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朧月夜の君は、着物姿もイメージしやすい人。若々しく鮮やかな総柄の振袖を着せてみました。

2024.02.24

まなぶ

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まなぶ

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こんにちは。tomekkoです。

源氏物語に登場する女君たちの性格やエピソードから、もしも現代に生きて着物を着たらどんなものを選ぶだろう、どんな着こなしをするだろう…… と想像するだけでも楽しいこの連載。

今回は、

照りもせず 曇りもはてぬ 春の夜の
朧月夜に 似るものぞなき

朧月夜の君です。

紫宸殿で催された桜の宴の帰りに、初恋の人である藤壺中宮に一目会いたい想いから忍び込んだ内裏。

そこで出会い、偶然とはいえ一夜の契りを結んでしまった相手は、光源氏にとっては政敵に当たる家の娘、しかも兄帝の妃になることが決まっている、決して手を出してはならぬ禁断の姫でした。

いと若うをかしげなる声の なべての人とは聞こえぬ 朧月夜に似るものぞなき とうち誦じて こなたざまには来るものか

いと若うをかしげなる声の なべての人とは聞こえぬ 朧月夜に似るものぞなき とうち誦じて こなたざまには来るものか
『全訳源氏物語 上巻』角川文庫

そんな恋ほど盛り上がる……というのは世の常なのでしょうか。

光源氏だけでなく朧月夜の君もまた、禁じられた秘密の恋ほど燃えるタイプ。二人はどうやら似た者同士だったようですね。

その後、朧月夜の君が内侍として宮中に参内し朱雀帝からの寵愛を受けながらも二人は密会を重ね、ついには朧月夜の父・右大臣に見つかってしまうのです(そして物語は「須磨」「明石」へ)。

なんとなく、紫式部の同僚で平安を代表する恋多き女、和泉式部を彷彿とさせるような……

そんな朧月夜の君ですが、これまでの紫の上や明石の上のように、源氏物語の中に着ている襲の色目については特に言及がありません。

その代わりに、容姿の良さが詳しくあらわされているような気がします。

いとなつかしう をかしげなり 艶になまめきたり

いとなつかしう をかしげなり 艶になまめきたり
『全訳源氏物語 上巻』角川文庫

若々しく派手で、親しみやすく可愛らしい人

これはモテるだろうなぁ……と想像つきますよね。

平安時代の美人とはちょっと違いますが、現代の感覚で読むと目鼻立ちがはっきりとして快活に笑ったり、そうかと思えばふと物憂げな上目遣いで引き留めてドキッとさせてきたり、そんな小悪魔的な美人が思い浮かびます

光源氏の贈る歌への返しもまた洒脱で魅力的。顔だけでなく頭も切れるあたりがやはり高貴なお育ちを感じさせますね。

そんな右大臣家の六の姫・朧月夜の君は、着物姿もイメージしやすい人です。

光源氏と出会った「花宴」では宴の後の盛装姿若々しく鮮やかな総柄の振袖を着せてみました。

細やかな古典柄が色鮮やかに全体に配置された振袖は、着る人を選びそう。着物の派手さに負けない華やかな顔立ちで、自信に満ちあふれたお嬢さんでこそ着こなせると思うんですよね。

個人的には、谷崎潤一郎の『細雪』に出てくる末っ子の悦子は朧月夜の君をモデルにしていたのではないかと密かに思っているのですが、ハイカラで洋装を楽しみ、あの時代に独身のお嬢さんが一人暮らしをしたり……と、溌剌と自分らしく生きる現代的な女性でありながら、姉たちと揃って着物を着れば育ちの良さに裏打ちされた上品さでなんでもサラリと着こなしてしまう、そんなイメージがあります。

一方で、平安時代の女性の装束には黒が無いのが残念なんですが、朧月夜の君なら黒ベースの着物も艶やかに着こなしてくれることでしょう。赤黒の組み合わせがいやらしくならない明朗な華やかさがありそうです。

また、ほどよく洋装をミックスしてシックながらも女性らしい甘さを取り入れたコーデも得意そう。

洋装を程よくミックス

アラベスク柄のようなパキッとして派手な現代柄もお手のもの

年齢を重ねた朧月夜の君は、女優の吉田羊さんのように、周りの意見にとらわれず「自分の好き」を集めて上手に組み合わせてチャーミングにオシャレを楽しみそうな気がします。

今回は初めて着ている色についての言及が無い登場人物だったのですが、案外そのほうが想像が膨らむな……なんて思ったりしました。

もちろん人それぞれイメージする性格や出来事によって思い浮かぶ色や姿は違いますよね。

こんな話を一緒につらつらと語り合えたら楽しそう!そんなオタク友達が欲しい今日この頃です。

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