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おしゃれは誰のもの? 「のんびり楽しむイラスト服飾史」vol.2

おしゃれは誰のもの? 「のんびり楽しむイラスト服飾史」vol.2

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冠婚葬祭などで最低限のTPOを守りさえすれば、他者と自己、それぞれを主軸にした美意識は両立していいはずです。難しい決まりや約束事があるから…と着物離れが進むよりも、洋装と同じように着物の活躍の場が広がってくれたら素敵ですよね。

後ろ姿の美意識

「見返り美人」どころじゃなくて、まるで「後ろ姿を褒められてこそ本物の美人!」と言わんばかり。奈良時代以降全く女性のファッションに登場しなくなっていたアクセサリーも、大きく複雑な形状になっていく髷を支え飾るための「かんざし」や「櫛」が、それはそれはすばらしい職人技で作り出されていきます。

こんにちは。
前回は日本人女性のファッションの中で独特に進化してきた「後ろ姿の美意識」の成り立ちについて考えてみました。

後ろ姿に重点を置く美意識は(上のvol.1で述べたように)平安時代から始まったと思いますが、時を経て女性たちが社会の表に顔を出すようになってからもそのまま進化していった理由のひとつは、物事を考える主軸が「他人」にある日本ならではの価値観ではないでしょうか。

鎖国した島国で単一民族、そして村社会、農耕民族。

狭いコミュニティの中で協調し他者の目に自分がどう映るかを強く意識してきた日本人。

おしゃれの在り方からは、こんなことも読み取れます。

季節的にそろそろ気になる「絽(ろ)」の着物(夏物)… 透け感が涼しげで、幼いころから憧れていたんです!

で、実際に着てみてわかった… イヤ思ってたよりあっついわ!!って(笑)

見た目ほど快適ではない絽の着物

絽の着物には絽の長襦袢が必要だし、意外と風も通さないので着ている本人は見た目ほど快適ではないんです。

そして他にも、着物には季節に応じてこんな通(つう)な着こなしがあるのをご存知ですか?

お花見や庭園へのお出かけで桜や花柄を外す

お花見や庭園へのお出かけで桜や花柄を外す、というのは「実物に勝るものはなし」と花に遠慮する粋な気配り。

(ルールではなくあくまでも見る人が見たらおっ!と思われるような気の利かせ方のようなものです)

でもこれって見方を変えると、自分を風景の一部と捉えて、他者から景色全体を見た時に調和しているかを客観的に捉える考え方ですよね。

また、基本的には着物の柄はひとつ先の季節のものを入れるもの、と言いますが、夏真っ盛りの時期の柄には、実は雪輪(雪の結晶を文様にしたもの)の柄が使われたりするんです。

これもまた、その着物を着ている本人ではなくその姿を見た人の目が涼むように、という他者を慮った気配りです。

さてさて、おしゃれは一体誰のもの?

少なくとも日本の歴史上、おしゃれとは「他者(見る人)を楽しませるもの」であり「俯瞰で見る景色のひとつ」だった一面がありそうですね。

もちろん着ている本人だって、仕込んだネタに気づいてくれる同じレベルの洒落人と密かに通じ合えることで楽しいんですよ。これぞ日本人のオタク気質って感じ…

侘び寂びの文化、奥ゆかしさを尊び美徳とする、なかなか世界に類を見ない面白い考え方だと思いませんか?

では現代、着物を通したおしゃれはどう進化しているのでしょう?

独創的な着物の楽しみ方

社会の在り方、人々の考え方の進化とともに、若い方を中心に画期的で独創的な着物の楽しみ方が広がってきています。

それを着て「自分の気分が上がるか」「自分が快適か」「自分が楽しめているか」…

おしゃれの軸が「他者」から「自分」に移ってきているんですね。

私はこれはどちらが正しいとも、どちらにしたほうがいいとも思いません。

おしゃれの軸は人それぞれ

自分が楽しむおしゃれと、他者と協調することで場全体を作り上げるおしゃれ。

冠婚葬祭などで最低限のTPOを守りさえすれば、他者と自己、それぞれを主軸にした美意識は両立していいはずです。

難しい決まりや約束事があるから…と着物離れが進むよりも、洋装と同じように着物の活躍の場が広がってくれたら素敵ですよね。

ちなみに聞かれてないけど私の今年の夏の目標は、無地の紗の着物に柄物の絽の長襦袢を透けさせるコーディネートを実現することです!!(なかなか絽の長襦袢に柄物ってのがないのよ…)

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