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錫師 山中源兵衛さん 【YouTube連動・見学編】「紗月がゆく!祇園・人気芸妓が訪ねる京の技」vol.6-2(最終回)

錫師 山中源兵衛さん 【YouTube連動・見学編】「紗月がゆく!祇園・人気芸妓が訪ねる京の技」vol.6-2(最終回)

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元芸妓の紗月さんが伝統工藝士の作業場を訪ねるスペシャル企画もついに最終回。前回からお伺いしている日本最古の錫工房「清課堂」にて、錫師・山中源兵衛さんの作業を見学します。ラストは紗月さんの表情を捉えたオフショットも盛りだくさん!

MCの紗月さんと山中源兵衛さん

伝統工藝士の作業場を訪ねるスペシャル企画も最終回が迫ってきました。私たちが最後に伺うのは、現存する日本最古の錫(すず)工房「清課堂」。時代とともにその数が少なくなってきた錫の魅力をたっぷりと、7代目当主の山中源兵衛さんに伺います♪元人気芸妓・紗月さんの、貴重な引退前オフショットも必見です!

ついに最終回

ちょうど1年前、京都きもの市場の公式YouTubeチャンネルにてスタートしたスペシャル番組「紗月がゆく!祇園・人気芸妓が訪ねる京の技」。

MCの紗月さん

祇園甲部芸妓・紗月さんの「約350年続く花街文化を支える職人さんたちの匠技を紹介することで後継者を発掘し、この先も絶えることない花街文化を継承していくお手伝いがしたい」という思いからスタート。

梅染師や和蝋燭職人、京七宝作家など、これまでたくさんの伝統工藝師のみなさまにご協力いただき、インタビューや体験を通して未来に繋げたい伝統の技や職人のものづくりに対する熱い気持ちを伝えてまいりました。

名残惜しい気持ちもありますが、昨年紗月さんが花街を引退され、本番組も連載も一旦今回が最終回。最後までゆっくりとお楽しみくださいませ!

芸妓の紗月さん

2021年11月に芸妓を引退した紗月さん。引き祝いには多くのメディアと関係者が集まり、その巣立ちを見守りました。コラム『紗月がゆく!祇園・人気芸妓が訪ねる京の技』を連載する「きものと」編集部も当日は現地へ。引退直前の10月に撮影した”ここだけ”のオフショットも加え、紗月さん引退の模様をお届けいたします。

金属工芸“錫(すず)”をまなぶ【YouTubeリンク】

最終回は、vol.6-1の前編に引き続き、金属工藝のひとつである錫(すず)の世界をお届けいたします。

七代目当主として、現存する日本最古の錫工房「清課堂」の看板を背負う錫師(すずし)・山中源兵衛さん。

今回は、実際の作業のようすを見学してまいります♪

今回お話を伺う錫師・山中源兵衛さん
錫師(すずし)・山中源兵衛さん
山中さんが手がけた錫の酒器。表面に金槌で模様が刻まれている
山中さんが手がけた錫の酒器。表面に金鎚で模様が刻まれている

溶かせば“地金”となって生まれ変わる

鋳造の工程を見学

錫製品ができあがるまでには、主に二つの作業工程があります。

最初に行われるのが「鋳造(ちゅうぞう)」。

錫の地金を火にかけて溶かし、セメントでできた鋳型に流し込んで大まかな型をとっていきます。

「表面には空気に触れた瞬間に“酸化皮膜”という化合物ができるので、それを取り除いて綺麗な部分だけをすくい取ります」

初めて溶けた錫を見たという紗月さんは、そのあまりの美しさに感動!化合物を取り除いた錫を覗くと、まるで鏡のように自分の姿が表面に映し出されます。

溶けた錫の表面にうつる紗月さん

錫が溶ける火の温度は約240度。
ちなみにタバコの火種が約800度なので、それに比べれば低い温度なのですが、それでも火のそばに近寄るだけでかなりの熱さを感じます。

火の温度は温度計で管理されている
火の温度は温度計で管理されている
上の型と下の型の隙間から錫を流し込み…
上の型と下の型の隙間から錫を流し込み…

錫を流し込んでいく鋳型を持つ左手には軍手がはめられていますが、慣れていてもやっぱり熱いとのこと。こればかりは「”耐え”ですね(笑)」と山中さん。

そして、まだ金属がやわらかいうちに鋳型を動かしつつ、型から外すタイミングを測ります。金属は冷えて固まると体積が縮むので、固まりすぎると食いついて動かなくなるからです。

錫が完全に固まる直前に上の型を外します

上の型を外す緊張の瞬間…!

型がスポッと外れる瞬間

スポッと綺麗に型が外れました。ベストなタイミングを見極めるためには熟練の技が必要です。

錫を急速に冷やして固める作業

今度は表面に筆で水を押し当て、急速に冷やして固めていきます。

下の型から取り出し、余分な部分を切り取ったら最初の作業は完了。酒器の型が完成しました。

余分な部分を切り取る山中さん
どんなに小さな端切れも再利用

その際に出た端切れも、また火で溶かせば再利用可能。

「昔から材料を再利用するシステムができあがっていて、今でも古いものを持ってきて『地金にしてください』というお客様もいらっしゃるんですよ」

無駄なものは何ひとつなく、端切れも古くなった製品も壊れて修理できないものも火で溶かしてしまえば、そこからまた新たな製品を作り出せる。それが金属工芸の大きな魅力でもあります。

先人の知恵と工夫を受け継いで

真剣な眼差しで鍛造の作業を行う山中さん
剣な眼差しで鍛造の作業を行う山中さん

大まかな製品の型ができあがったら、今度は厚みや直径を刃物で削って調節していく「切削(せっさく)」の工程に。

轆轤(ろくろ)で器を回転させながら、鉋を使って約0.1mmほどの薄皮を少しずつめくっていきます。

紗月さんも息を呑んで完成を見守ります
紗月さんも息を呑んで完成を見守ります

完成イメージに近づけるためにあと表面をどの程度削ればいいのか…

この工程では、作業する人の感覚が試されます。

しっかりと中心軸があっていないとぶれてしまうため、少しの油断が命取りに。

固い金属の表面を削るから想像以上に力も要ります。無駄な動きも隙も一切ない職人技をそばで目の当たりにし、呼吸をするのも忘れてしまう紗月さん。

削った後がピカピカに

先ほどまでザラザラとした表面が、山中さんの手で磨かれるように削られてツルツルピカピカに変化しているのがわかるでしょうか。

完成したぐい呑み

こちらが今回山中さんが作ってくださった“ぐい呑み”。
製品によってはここからさらに金鎚でひとつひとつ模様を入れていきますが、表面に模様のないシンプルなものであれば、これで完成。

錫のぐい吞みが完成
曲線美に魅せられて

「まさに一皮剥けたって感じですね!みてください、この曲線美すごくないですか?」

紗月さんも思わずカメラに向かってアピール。

もちろんこの作業で出た削りカスも、また鍋で溶かされて地金として再利用されます!

ろくろの下にはたくさんの削りカスが
ろくろの下にはたくさんの削りカスが

最後に貴重な作業を見学させていただいた山中さんに、「山中さんにとっての錫(すず)とは?」を伺います。

山中さんが思う錫とは

山中さんにとって錫(すず)とは、「先人の知恵」。

「創意工夫はしているつもりですが、やはり先人たちが積み重ねてきた歴史にすごく重みを感じています。その知恵と工夫を私たちの子どもの世代、孫の世代にまで受け継いでいきたいと思っています」

山中さんと紗月さんのツーショット

何年もかけて積み上げられてきた職人の技と知恵からなる錫(すず)の世界。いかがだったでしょうか。

「今回は金属工芸の錫をお勉強したんですけれども、溶けた錫をはじめて見て、金属の中でも一番やわらかい繊細なものなんやなと実感させてもらいました。これから私も、コレクションとして錫工芸の作品を集めていきたいと思います」と紗月さん。

こちらは清課堂の西ノ京工房。3年前から稼動しました
「清課堂」西ノ京工房にて

本番組も連載もこれにて以上となりますが、これからも私たちは日本が世界に誇る伝統工藝の技が永久に未来へと続くよう願っています。

まだまだ先を見通せない日々が続きますが、ぜひ京都に立ち寄った際には、ご紹介してきた職人の方々が生み出す作品をその手に取ってみてください。

これまでご視聴・ご愛読いただいたみなさま、取材に協力していただいた全ての方に、心より御礼を申し上げます。本当にありがとうございました!

撮影オフショット、そして今後の予告も♪

今回の撮影で紗月さんが選んだのは黒地の小紋
紗月さんが選んだ黒地の小紋。オフィス街に花開きます
金糸を使った龍村美術織物の名古屋帯も品格があり、新年一発目の撮影にぴったり
季節のムードを感じさせる梅花模様に、龍村美術織物の名古屋帯
撮影前の打ち合わせでも笑顔が絶えません
撮影前の打ち合わせでも笑顔が絶えません
紗月さんも思わず“エア”グイッと
“エア”グイッとシーンをもう一度!
こんなに職人さんの作業を近くで見られることはそうそうありません!
こんなに職人さんの作業を近くで見られることはそうそうありません!
山中さんは目力が強く言葉にも説得力があります!
目力も強い山中さん。言葉にも説得力があります!
貴重なご機会をいただき本当にありがとうございました
貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました!
紗月さんのMCとしてお話を引き出す力やいつも素敵な笑顔に助けられた一年間でした
紗月さんのMCはいつもその場の空気がほがらかに
大きな壺の前で一枚
やわらかな陽光ふりそそぐ窓辺にて錫作品とともに

今後も「祇園元芸妓・紗月」として活動を続けられる紗月さん。

実は、新シリーズの公開も予定しております!
さてどんな内容となるのか…みなさまどうぞお楽しみに♪

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