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葉月、五山送り火に添える彩り「未生流笹岡家元に学ぶ、華やぎあるくらし」vol.12（最終回）

葉月、五山送り火に添える彩り「未生流笹岡家元に学ぶ、華やぎあるくらし」vol.12（最終回）

2025.08.08

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未生流笹岡家元・笹岡隆甫さんに、華やぎあるくらしについてヒントをいただく連載もついに最終回です。月々、お家元のいけばなへの想いを通して、日々の生活に華やぎをプラスするコツを知ることができました。その教えを活かし、四季折々の草花を愛でながら、心が浮き立つ毎日を愉しみましょう。

送り火に彩りを添えた一夜限りの作品
送り火の頃に振り返る、樹木希林さんの言葉
今月のお家元 ―葉月の華やぐ思い出

「コロナ禍で例年よりは点火数がぐっと減る送り火に彩りを、というオファーをいただき、床の間ではなく、お客様を迎える表座敷全体を舞台に見立てて、紺毛氈こんもうせんで水の気配を表現し、空間を演出しました」

点火の前後で異なる景色となるよう、まずは緑にハスやスイレンといった花を合わせて夏を表現。「送り火が終わると、京のまちには秋の気配が訪れる」という思いから、点火後は、ナナカマドと秋草を加えて季節を先取りしました。

「こうして旬とはしりの季節を同時に表現することを、いけばなでは『二季の通い』といいます。二つの季節が通い合う景色をつくることができるのも、季節の移ろいを感じられる日本の美しさのひとつですね」

「本来、朝方に開花して夕方には閉じてしまうスイレンを使うことになり、大量の花を準備して、夜まで咲き残ったものを100輪ほどいけたのですが……中継本番は土砂降りの雨に。

花をいけた後は、NHK京都放送局内のサテライトスタジオへ移動して、雨に降られることなくパフォーマンスを終えた私に、樹木さんが『いいわね、笹岡さんは』と仰って、スタジオは大爆笑でした。五山の送り火が近づくと、そのときの樹木さんのお顔やお声を思い出します」

最後に、一年間の連載を振り返って――。

「梅雨が短くなったり、ゲリラ豪雨が多くなったり。四季が二季になりつつあるとも言われますが……それでも、やはり折々の花と共に楽しむ毎日を送ることで、自然を身近に感じ、この美しい地球を次世代へ繋いでいかなければ、と思います。

何気ない草花に季節の移ろいを見出し、自然を愛でることで、喜びや癒しを感じてもらえたらと願います。くらしの華やぎは、意外と身近なところにあるのかもしれません」

〆の鰻は、熟練の職人さんがその日さばかれたものを自分で焼くスタイル。

まずは、塩と柑橘で白焼きを。鰻本来の美味しさが体感できます。次に、秘伝のタレで蒲焼にしていただきます。土鍋で炊き上げたごはんにのせれば、うな丼の完成です。自ら焼いて食べるという経験も、ご馳走ですね。

2度目の訪問でしたが、スタッフの心地よい接客に、ご一緒したお世話になっている先輩方と落ち着いたひとときを過ごすことができました。

笹岡隆甫

1974年京都生まれ。京都大学工学部建築学科卒業。3歳より祖父である二代家元笹岡勲甫氏の指導を受ける。2011年、三代家元を継承。舞台芸術としてのいけばなの可能性を追求し、海外での公式行事などでもパフォーマンスを披露する。2016年にはG7伊勢志摩サミットの会場装花を担当し、東京2020オリンピック聖火リレーでは京都府の最終ランナーを務めた。京都ノートルダム女子大学客員教授、大正大学客員教授、京都市教育員会委員。著書に『いけばな』（2011年／新潮新書）、『百花の教え』（2010年／ぶんか社）、『美的生活のヒント』（2007年／マガジンハウス）。
ウェブマガジン「ほんのひととき」にて「笹岡隆甫花の道しるべ from 京都」〈笹岡隆甫花の道しるべ from 京都｜ほんのひととき｜note〉を連載中。

学生時代、サボテンを枯らしたときから「緑の指（グリーン・フィンガーズ）」を持つ人に畏敬の念を抱きがち。隆甫氏が次期家元だった20年ほど前に茂山宗彦さんの仲立ちでご縁をいただき、京都で初めてとなる「五山の送り火」を旧稽古場の屋上にて一緒に眺めた思い出がある。お気に入りの花は、屋号とした椿。とくに、黒侘助の佇まいと落ち方が好み。その他、春の訪れを告げる黄色い花に心が浮き立つ。好きな花の香は、沈丁花。