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染匠市川

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創業70年の「染匠市川」が手がけるのは、すうっと抜けるようなうつくしい地色に、極上のエレガンスで描き出された伝統的な手描き京友禅。

古典の意匠に現代の色彩、市川友禅の魅力

なめらかでしっとりした生地に触れれば、指先から静かな高揚が広がってくる。身にまとえば、すっと背筋を伸ばして、最高のシーンを彩ることができるはず。

一瞬でそんなあこがれを抱かせ、心を虜にする老舗「染匠市川」のきもの。

卓越したセンスを感じる作品の数々は、すべて三代目 市川 昌史 社長の指揮のもとに仕上げられたものです。

今回は社屋へ伺い、「染匠」の仕事、制作へのこだわりを取材させていただきました。

2025.07.18

インタビュー

染匠市川 市川昌史さん

「染匠」の仕事とは?

――まず、「染匠」の仕事を教えていただけますか?

「京友禅は、企画・図案から20ほどの工程を経て仕上がるものなのですが、そのすべての工程にプロフェッショナルの職人がいます。

僕たちはそのすべての工程を、予算や納期から逆算して、イメージ通りに仕上げるのが仕事です。企画を職人のところへ持って行って、また出来上がったら次の行程の職人のところへ持って行く……プロデューサーのような感じですね」

――「染匠」というと、工房で制作しているようなイメージでした。

「京友禅の制作行程で、よく図案から染色まで一列で順に説明されているものがあるのですが、個人的にはサークル(円)のような形の方が正解だと思っています。

つまり、それぞれの工程に職人がいて、反物は職人から職人に受け渡されていくわけではなく、各工程の出来上がりを染匠が確認作業(チェック)しながら、次の工程の職人に指示を出して持っていく。

その真ん中で行程をコントロールするのが「染匠」なのかなと。うちの中にも専属の職人はいますが、ほとんどが個人で自宅でされているような感じです」

――「染匠市川」さんがひとつひとつの工程を繋いでいくような感じなのですね。

「ぼかしの技法を使おうと思ったら、ぼかしの上手な職人に依頼するんですが、ふわっとした霞ぼかしが得意な職人と、シャープなぼかしが得意な職人がいるんです。

それぞれ完成イメージに沿った方に依頼して、企画段階からブレのない仕上がりに持って行くのが僕の仕事だと思っています」

職人さんとの信頼関係あってのものづくり

――図案は市川社長ご自身がされているのですか?

「大枠はそうですね。ラフ画のようなものを雛形にざっくり描いて、職人に渡して、きれいな形に図案を起こしてもらっています。

口だけではやはり伝えづらいですから、『ここの下前まで流水を、ここに花びらを……』というふうに描きながら説明します」

――職人さんとイメージをきっちり共有してから取り掛かるんですね。

一番大事なのは、職人とのコミュニケーションだと思っています。図案もそうですが、例えば『薄い黄緑色』と言っても、その場にいる全員がまったく違う色を想像しちゃうんです。

このイメージを阿吽の呼吸で理解できる関係は、やはり毎日会って、毎日行って、出来上がったものを見て、あれこれ言わないと出来ません」

――職人さんとの信頼関係があるからこそ、市川社長のセンスが活きてくるのだと感じます。

時代に沿った「いいな」と思うものを

――「染匠市川」といえば

うちは特に『糊糸目のりいとめ』にこだわってやっていますね。

『ゴム糸目』の方が扱いやすく、シャープなラインは描きやすいので、その方が良いときもあるんですが、うちは意匠的にやわらかいラインを使いたいことが多い。

意識してじっくり見なければ分からないのかもしれませんが、一つひとつの手間を惜しまないことで、上品な友禅にさらに奥行きと立体感、そして草花の柔らかさを感じることができます

――色の組み合わせが本当に素敵です。配色決めなどはどのようにされているんでしょうか?

「自分がいいな、と思う好みの組み合わせが多いですが……女性のファッション誌などを積極的に見て、今っぽいテイストをベースに持つようにしていますね。

ハイブランドショップに立ち寄って、バッグやスカーフを見るのもとても勉強になります。

こんな茶色にこの青を足すとおしゃれだ!とか。笑」

――なるほど!現代の感覚にぴたりと合うわけですね。配色が変わるだけで、琳派などの意匠もあたらしい印象を受けます。

「色んなものを見て、時代に沿った『いいな』と思うものを作っていきたいですね。そうでないと、作っている側の僕たちも飽きてしまう。笑

変わらず伝統を伝えるために、変わり続けていかないといけない。僕たちがわくわくしながら、お客様がときめくものを作っていきたいです」

――「ときめき」は、まさに「染匠市川」のきものを初めてみたときに覚えた感情です。

「ありがとうございます。ぜひ手にとってみてください。
着用される方の気分を高め、彩りを添えるような1着となれば、大変うれしく思います。これからも時代に挑戦していきます。

――私たちも市川社長のものづくりのこだわりを、今後も丁寧にみなさまへご紹介できればと思います。

社長 田中と店長 吉岡が見学させていただきました

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