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プライベートジュエラーの誇りを和姿に 『ウエダジュエラー』前編「日本のジュエラーを訪ねて」vol.1

プライベートジュエラーの誇りを和姿に 『ウエダジュエラー』前編「日本のジュエラーを訪ねて」vol.1

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クラリティが非常に高いダイヤモンド、インクルージョンが見当たらない大きな色石、繊細な彫金…… どれをとってもハイクオリティ、かつ現代のファッションに沿ったデザインのジュエリーばかり。

Chapter 1 日本でもっとも歴史あるジュエラー

創業1884(明治17)年。140年余という、日本でもっとも長い歴史を持つジュエラーが 『ウエダジュエラー』です。

ウエダジュエラー

ウエダジュエラー店内

日本を代表する宝石史研究家の山口遼さんは、

「ウエダジュエラーが作る商品は、まったくの正統派ジュエリーだ。素材、デザイン、そして作りのいずれの面でも、日本のジュエリーとして、最も本筋を抑えており、すべてにおいて最高のものを集めたと言える」

と語ります。

『ウエダジュエラー』の店舗には、ジュエラーが誇るアーカイブが展示されています。

アールデコ風の帯留

アールデコ風の帯留(『ウエダジュエラー』アーカイブより)

こちらは、アールデコ風の帯留。大正から昭和初期にかけて制作されたもので、大小のダイヤを美しく配し、プラチナで留めています。

ディテールの美しさには、思わず息をのむほど。革張りのボックスが品格を添えて。

私が初めて 『ウエダジュエラー』を訪れたのは、1995年のこと。雑誌『婦人画報』のファッションチームの一員として働いていたときのことです。

当時から、ダイヤモンドやパール、色石のクオリティと、自社のアトリエで制作するオリジナリティあるジュエリーは高い評判を呼んでいました。

そして今でも、『ウエダジュエラー』の品質に対するこだわりは変わりません。

クラリティが非常に高いダイヤモンド、インクルージョンが見当たらない大きな色石、繊細な彫金…… どれをとってもハイクオリティ、かつ現代のファッションに沿ったデザインのジュエリーばかり。

三連パールのリング

三連パールのリングは、訪問着から小紋、織りのきものにまで幅広く似合います。今回は訪問着×軽めの袋帯にポイントを置きたかったので、ブラックパールのブローチを帯留に代用。 『ウエダジュエラー』のパールの品質には定評があり、このブローチにも贅沢に使用されています。
リング(パール×Pt)682,000円
ブローチ(南洋黒真珠×ダイヤ×Pt)1,485,000円

“プライベートジュエラー”として、数世代にわたり 『ウエダジュエラー』をひいきにするご家庭もたくさんあります。

Chapter 2 140年前の創業秘話

1884年、東京・京橋の一角(現在の銀座電車通り)に「植田商店」(K.UYEDA.)は最初の店舗を構えました。

初代・植田吉五郎氏は独学で英語を学び、外国人向けの美術工芸品を販売する店を創業。

創業当時のショップカード

創業当時のショップカード。「東京でお買い物をするなら、ウエダジュエラーのエナメル(七宝)銀細工」という文言が。創業当時は「K.UYEDA.」という店名でした。

有楽町の本店

関東大震災で本店が焼失したのち、1925(大正14)年に営業を再開した有楽町の本店。和洋折衷の建築様式が話題になったそう。

超絶技巧で知られる薩摩焼の花瓶や皿、職人(金属の飾り物を作る専門の職人)が手掛ける銀製の食器や置物を販売しました。

なかでも人気だったのは、銀線で繊細なレース模様をかたどり、七宝を施した長崎県平戸発祥の「平戸細工」のジュエリー。

平戸細工の帯留

平戸細工の帯留(『ウエダジュエラー』アーカイブより) 大正時代に制作されたもの。銀線で花をかたどり、中央には大きなアメシストを配置。裏面金具に当時の漢字での刻印「植田」と入っています。

現在ではわずかに秋田の伝産品として残る技法ですが、当時は海外のゲストが先を争って求めました。

大正時代から昭和初期頃に制作されたブローチ

大正時代から昭和初期頃に制作されたブローチ。ホワイトゴールドで4つの華紋をかたどり、一粒のパールを添えたところにモダンさがうかがえます。当時のジュエリーボックスとともに。

粒ダイヤモンドのリング

大正期に制作された一粒ダイヤモンドのリング。きものの模様にもある「捻梅」のように石を留める日本独自の「ねじ梅留め」でセッティングされています。可憐で繊細な作りは大正期に大流行しました。

Chapter 3 国内外のセレブを迎えて

二代目・富士朗氏と弟の義巳氏

帝国ホテルの店舗で、シルバーのコーヒーセットをゲストに見せる二代目・富士朗氏と弟の義巳氏。

1922年、二代目・富士朗氏は世界のセレブリティを迎える日本の最高級ホテルとして新築された帝国ホテルに出店します。

新店舗には、ベーブ・ルースやジョー・ディマジオ&マリリン・モンロー夫妻、ソフィア・ローレンやフランク・シナトラといったスターから、マッカーサー夫妻、キッシンジャー夫妻、ライシャワー夫妻など政財界の要人が訪れ、その名を顧客のサイン帳に残しています。

マッカーサー一家

1950 年来日したマッカーサー一家。夫人は、ソルト&ペッパー入れなど銀製品のお土産を購入。いまでもアメリカ・ノーフォークのマッカーサー記念館に収蔵されています。

海外のセレブリティは、ウエダジュエラーの職人がもつ高い技術に目をみはり、美しく繊細なデザインからなる、ハイクオリティなジュエリーやシルバーウェアに惜しみない称賛を送りました。

その評判は彼らが帰国したのちも、口コミとして伝えられ、海外でもウエダジュエラーの名前は広まることになったのです。

大正末期から昭和初期に制作されたリング

左:大正末期から昭和初期に制作されたリング。鮮やかなグリーンのエメラルドをダイヤモンドで囲ったアールデコ風のデザイン。アームのプラチナにも彫金が施されています。
右:同じく大正から昭和初期に制作されたオニキスのリング。象嵌の手法でダイヤモンドが嵌め込まれています。

Chapter 4 受け継がれる歴史

三代目・新太郎氏は、1970年代に起こるイタリアンジュエリー・ブームの火付け役して活躍するなど、日本の宝飾史に名を残します。

また四代目の友宏氏は 『ウエダジュエラー』レガシーを守りつつ、モダンなジュエリーを展開。新たな息吹をもたらしました。

そして五代目を継いだのが、およそ30年にわたり、デザイナーとして 『ウエダジュエラー』を支える植田嘉恵さんです。

女性ならではの視点も活かし、現代に合うジュエリーとは何か、を問い続けています。

社長でありデザイナーの植田嘉恵さん

私が店舗を訪れた際、対応してくださったのは 『ウエダジュエラー』社長でありデザイナーの植田嘉恵さん。デザインの想いをお聞きすることができます。

「アールデコブローチ」を現代に復

1923年に制作された「アールデコブローチ」を現代に復刻。オニキスと水晶、の六角形のブローチは、かつてイギリス人の顧客が購入したものでした。ロンドンのオークションで三代目・新太郎氏が買い戻し、同じ素材と日本の七宝の技術を用いて復刻版を制作しました。
ブローチ(七宝×水晶×瑪瑙×プラチナ)693,000円

アールデコ様式の帯留

大正から昭和初期に制作されたアールデコ様式の帯留を、ブローチ兼用ペンダントとして現代に復刻。当時、オニキスが使われていた部分を金に変え、地金に彫りが施されていた部分にバゲットカットダイヤモンドをあしらい、現代のセンスに合わせてリデザインされています。
ブローチ(ダイヤモンド×K18×プラチナ)1,320,000円

店舗のスタッフはベテランも多く、思わず「ただいま」と言いたくなるアットホームな雰囲気に包まれています。そんな空気感も“プライベートジュエラー”と称される理由でしょう。

次回はそんな 『ウエダジュエラー』の新作や定番をラインナップし、きらびやかなジュエリーの世界を堪能していただきましょう。

今日の装い

今日の装い

右手のリング(南洋真珠×ダイヤモンド×K18×Pt)1,650,000円

パウダーブルーの地にクリームの霞を入れ、シダのような模様をあしらった訪問着に、白銀と淡いパープルの横段の洒落袋帯で。

もちろん、今回着用させていただいたジュエリーは、すべてウエダジュエラーのお品物。

きもの姿をいつもより華やかに仕上げてくれるジュエリー。

素敵なジュエリーは着姿に自信を与えてくれますし、気分も上がりますよね。ジュエリーを味方につけて、素敵なきもの姿を完成させてください。

撮影/田村浩章
ヘアメイク/高橋亜季(アンベリール)
着付け/石山美津江

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