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いつか、砂漠やサバンナで着物を。【フォトグラファー ヨシダナギさん】(後編)「着物ひろこが会いに行く!憧れのキモノビト」vol.2

いつか、砂漠やサバンナで着物を。【フォトグラファー ヨシダナギさん】(後編)「着物ひろこが会いに行く!憧れのキモノビト」vol.2

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”着物ひろこ”こと長谷川普子さんと、フォトグラファー・ヨシダナギさんの対談後編。ナギさんが屋久島で送っている暮らしについて、そしてそれぞれが海外で触れてきた民族衣装などへの考え方、着物のこれから、などについて語りました。

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2025.01.25

よみもの

着物で海外を歩くとどうなる?【フォトグラファー ヨシダナギさん】(前編)「着物ひろこが会いに行く!憧れのキモノビト」vol.1

フォトグラファー ヨシダナギさん

広大な空と大地を思わせる美しい和姿にて登場いただいた前編に引き続き、フォトグラファー・ヨシダナギさんと着物ひろこさんの対談後編をお届けいたします!

ナギさんプロフ

ヨシダナギ

1986年生まれ フォトグラファー。独学で写真を学び、2009年より単身アフリカへ。以来アフリカをはじめとする世界中の少数民族を撮影、発表。唯一無二の色彩と直感的な生き方が評価され2017年日経ビジネス誌で「次代を創る100人」へ選出。また同年、講談社出版文化賞 写真賞を受賞。

アフリカをはじめとする世界の少数民族や先住民を撮影するナギさんは、TBS『クレイジージャーニー』で取り上げられたり、『SURI COLLECTION』『HEROES ヨシダナギBEST作品集』など数々の写真集も出版しています。

作品写真

今回は、着物ひろこさんとヨシダナギさんの対談後編。

屋久島での生活や、”民族”という切り口で見る着物についてお伺いします。

カジュアルな和装をしたいなら、まずは浴衣

着物ひろこさんとヨシダナギさんの立姿

着物ひろこ(以下、ひろこ):ナギさんは、子どもの頃から着物を着ていましたか?

ヨシダナギ(以下、ナギ):七五三のときと、盆踊りのときくらいでした。だから、着物=特別な日のものというイメージ。着物を少しでも普段着にと思って、着付けは習ったんです。でも着物って、心にも余裕がないと着られないというか。

ネットを見ていたら、着付けの上手い下手などが上がっていて、小心者なので自分の着付けで外に出る勇気がなくなってしまい……でも最近は、カジュアルなものやとてもモダンな着物もでていて、すごくいいなと思います。

ひろこ:私は浴衣から始めました。高校生のころに浴衣を縫ったり着たりする授業があって、基本を覚えました。そこで学んだ着方に、襦袢を着て衿を入れたら着物になるんですよね。ぜひナギさんにも挑戦してもらいたいなぁ。

ナギさんは屋久島で生活しているとのことだけど、屋久島で浴衣をさらっと着たら、とても素敵じゃないかしら

着物ひろこさん04

ナギ:私が住んでいるのが400人くらいの集落なので、目立ちそうですね。でも、お祭りのときなら着られるかも!

屋久島での生活は、”団地の距離感”

ひろこ:屋久島にはどういったきっかけで移住を?

ナギ:都会での生活だと、自分のプライベートが突然SNSなどに晒されたりすることがあって、外に出たくない理由になってしまっていたんです。それで思い立って、屋久島で生活することにしました。

島の方が人と人の関係が密なのですが、私にはそれが全然苦ではない。小さい頃に住んでいた団地の距離感に近いのかも。

ヨシダナギさん見返り

ナギ:「これを預かってて」というようなカジュアルなやりとりができるから寂しくないし、隣に誰が住んでいるとか、体調を気遣ってもらえるとか、逆に私がおじいちゃんの体調を気にかけるとか。

ひろこ:昔の下町や団地の雰囲気ですよね。

私も、タイや台湾で生活し始めたころ、言葉は通じないけれど挨拶はしてたんです。そうすると、「この人はあそこの日本人だ」と覚えてくれて、何かあれば誰かが助けてくれるという安心感につながりました。

少数民族と文化、そして着物のこれから

ひろこ:ナギさんは少数民族の写真をずっと撮っていらっしゃって、「裸族が洋服を着るようになり、今は商業・観光用の衣装になってしまっている」というお話しをしていたのが印象的でした。

私が住んでいたチェンマイや台湾でも、少数民族が商業的な存在になってしまっていることを肌で感じていた部分があって。

服装=文化、でも着物も、着る人がすごく減ってしまっている。そんなことについてはどう思われますか?

着物ひろこさん05

ナギ:着物は日本のトラディショナルな衣装なので、なくなってしまうとなるととても悲しいです。

でもひろこさんみたいに発信してくれる人がいる限り、興味がなかった人でも「私も着られるかも」と思う人が増えていくと思います。

そういう一人ひとりの姿は、着物を細く長くでも残していくために必要だと思っています。

ヨシダナギさん06

ナギ:形やデザインは変わるかもしれないけれど、無くなりはしない。そんな気がします。日本特有のものですし、若い人でも好んで着ている人もいる。時代と共に形を残していくものなんじゃないでしょうか。

カメラマンという天職をどう捉えるか

ひろこ:ナギさんは海外での撮影が多かったと思うのですが、コロナ禍で渡航が難しくなった影響はありましたか?

ナギ:実は、家にこもっていられるのはうれしいことでした。

私の人生の中で、毎日知らない現場に行って、はじめての人と会うというのが増えて……ちょうど「こんなに働くために生まれてきたわけではない」と思い始めていたタイミングでもありました。

ヨシダナギさん01

ナギ:カメラマンを辞めてもいい、という考えが頭をよぎったこともありました。

でも、アフリカに行って彼らと触れ合うことが当たり前じゃない、ということに気づいたんです。

きっと何か意味があって私はカメラマンになって、子どものころに見たマサイが私をカメラマンに引き上げてくれた。取り柄も学歴もなかった私を、マサイが取り上げてくれた、と。

これを無責任に「辞める」と言っちゃいけない、と思いました。だから、続けられるだけ続けたいな、と思っています。

ひろこ:ナギさんは、これから何を目指ししていくのでしょう?

ナギ:アフリカで、マサイ族に恩返しをしていきたいですね。それがアフリカのためになると思うし、写真がきっかけで誰かの支えになることもあると思う。自分にできることは続けていくべきだなと思っています。

いつか、砂漠やサバンナで着物を

ひろこ:ちなみに、着物で行ってみたい国はありますか?

ナギ:着物で砂漠とかサバンナには行ってみたいですね。

少数民族の人たちってそもそも「日本」という言葉自体を知らないんですよ。

「お前の文化はどんなものだ?」と言われた時に、着物をまとっていたら伝わるものも増えるかもしれません。

着物ひろこさんとヨシダナギさんのネイル

ひろこ:アフリカの布で作られた着物も面白そうですね。布はみたことあるけど、どうしてこういう形になるんだ?って楽しんでもらえるかも。

逆に、マサイの方々がふわっと着物を羽織ってもかっこよくなりそう。

今日はたくさんのお話しをありがとうございました。これからのナギさんの活躍もすごく楽しみです!

着物ひろこさんとヨシダナギさん

構成・文/山本梨央
撮影/伊藤圭
スタイリング・着付け(ヨシダナギ)/大竹恵理子

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