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古い着物をきれいにリフォーム&クリーニング!京都の悉皆職人とマンツーマン相談会 in 名古屋栄店

古い着物をきれいにリフォーム&クリーニング!京都の悉皆職人とマンツーマン相談会 in 名古屋栄店

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2019年9月27日〜29日、京都きもの市場 名古屋栄店では「きものクリニック&リフォーム相談会」を開催。京都から悉皆の職人さんをお呼びし、直接相談できるという贅沢な相談会…その模様をお届けします。

普段着物をよく着ている方でも、クリーニングはクリーニング屋さんに預けていたりと、なかなか職人さんに直接相談するような機会はないのではないでしょうか。
今回のイベントは、さまざまな悩みを悉皆職人さんにマンツーマンで相談できる贅沢なイベント。


お気に入りの着物にシミが出来てしまった、譲り受けた着物の丈が合わない、色が似合わない、などなど、着物にまつわるお悩み相談やお直し・クリーニング相談まで!

直接、悉皆職人さんとお話できる、京都きもの市場で大人気のイベントなんです。


今回は2019年9月下旬に名古屋栄店でおこなわれた相談会の模様をレポートいたします。
レポーター/ruri

着物は祖母や叔母から譲り受けたものを20着以上所持。
譲り受けた着物を着たくて茶道を習い始めました。おもにお茶会やお稽古で着物を着ています。まだまだ着物初心者なので、染めや織りなどに詳しくなるべく日々勉強中!

今回のイベントで着物について相談に乗ってくださるのは、京都の悉皆職人、澤村さんです。

週に三日程はこのような相談会などで、京都以外の場所にいるそうです。

私のような着物初心者にも、保管方法やお直しの仕方などを丁寧に教えてくださいました。


顔写真はちょっと…とおっしゃっていたのですが、少しだけでもとお願いしたところ「小さく写っているのものだったらいいですよ」と了承をいただきました。

(お優しい…。ありがとうございます)

澤村さんも悉皆の職人さんなのですが、実際に着物をリフォームすることになると、
リフォーム内容に合わせて、それぞれ染色や刺繍、絵付けなど専門の職人さんが担当します。
京都は職人さんも多い街ですから、代々続いている工房などもあるそうです。

写真の左側に写っている小物類や着物についても、個別相談のあとに紹介していただいたのでのちほど詳しくご紹介しますね。
私も数点持ち込んで相談させていただいたので、早速ご紹介します。
みなさまの参考になれば幸いです。

まずは、祖母から譲り受けた銀箔が施された袋帯。

こちらは年に1回着るか着ないかという使用頻度で、最後にいつクリーニングに出したか記憶が曖昧です…。

少し柄の部分が変色している点があったので、今回持ち込みました。

帯を卓上に出してすぐに言われたのは「あ~カビですねえ」のひとこと。
カビというのは、匂いでわかるのだそうです。

私がほこりっぽい古い匂いだと思っていたのは、実はカビの匂いでした…。

柄がない部分にもポツポツとできているシミが実はカビで、写真だと少し分かりづらいですがライトに透かして見るとよりくっきりと浮かび上がってきました。(涙)

ブラックライトを当てるともっとわかりやすいそうです。
この場合は、カビ洗い・除菌洗いがおすすめで、黄変直しという方法もありますが地色が真っ白く漂白されてしまうので、黄変部分が多いとお金ばっかりかかってしまうよ、と教えてくださいました。
たくさんの実例を集めた資料も見せていただき、わかりやすかったので写真を撮らせてもらいました。
例えば帯の黄変を直す場合は、こんな風に変えられるようです。

左がお直し後、右がお直し前です。

きれいになる前は私が持ち込んだ帯と同じで、黄変がポツポツとできています。

それを全体的に色味を変え、柄の部分には金箔を貼ってお直しされています。


これは本当に素敵!

お気に入りの帯がこんな風にきれいに蘇ると、本当にうれしいですね。

こちらは全体的に黄変してしまったので、柄以外を依頼主さまが好きな青に染めてお直しされたそう。

雰囲気ががらりと変わって、こんな蘇らせ方もあるのか!と感動です。

カビや黄変は、全体的によく相談されることのようで、「長く保管する場合はきれいにしてしまいこんで下さいね」とご注意いただきました。
自分の無精さを感じ、着物のお手入れをしっかりしよう…と思った次第です。。
さて気をとり直して、2点目は叔母から譲り受けた青海波の小紋について相談をさせてもらいました。

この着物は何度かお稽古やカジュアルなお茶会で着ているのですが、裄が短いのでもう少し長くできたら、と思い持参しました。

ちょっと正確な測り方ではないけど…と言いつつ、テキパキと裄丈を測っていただき、これならだいたい5cmくらいは出せそうですね、と教えていただきました。

ただ、ほどいてみないと実際にはわからないので、おおよその長さを教えてもらえます。

また、一度ほどいてお直しするので、元の部分の縫い跡がどうしても出てきてしまいます。

その縫い跡を水張りなどで直していくのをスジ消しといい、それをやるかやらないかでまた金額が変わってくるそうです。


また、身丈直しの依頼も多く、過去には2枚の着物を持ってきて、2枚を組み合わせて1枚の着物を作った方もいるそうですよ。

もし裄丈と身丈を両方変えるなら、縫い変え、つまり反物に戻して仕立て直す方が安いと思うよ、と教えていただきました。

最後は、1つ紋の色無地について相談させていただきました。


この着物も叔母から譲り受けたもので、お茶をやっているなら、と色無地を譲ってくれましたが、色があまり好みではなく、どんな風にお直しできるのかな?と思って持参しました。

色については、このような薄い色だと色が入りやすいので比較的簡単に染まるようです。
濃い色については一度色を抜いて、希望の色味に染めていくのでその分手間がかかり、お値段も薄い色のものより高くなります。

全てほどいて、反物にして染めることになるので、やはり手間がかかりますよね。
実例集の中にもさまざまな作品があったので、一部を紹介します。

こちらの左は、もともと小紋だったものを、濃い色で部分的に染め上げ、付け下げ小紋としてお直しした例です。

右の大島紬も、肩のあたりの日焼けがひどかったところを染め、素敵に生まれ変わっています。

こちらも全て染めでお直ししたものだそう。

無地の着物や小紋に、上から濃い色を乗せてデザインされて、まるで別の着物のように生まれ変わっていて本当に素敵です。


こんな風に大切な着物をお直しできるというのは、本当にロマンがあります…!

ちなみに、こんな風に振袖を訪問着にお直しした例もありました。

袖と色をお直しして、とてもシックになっています!

個人的にも、気に入っている振袖を訪問着に直せるのかな?と思っていたので少し聞いてみましたが、澤村さんはあまりおすすめしていないそう。
振袖は柄が振袖用にデザインされているし、10代や20歳前後で似合う色や柄になっているため、というのがその理由だそうです。


切ってしまったら基本的には戻らないので、大切にして受け継いでいく方が価値があると思いますよ、とお話してくれました。


私もお話を聞いて、大切に保管しておこうと思いました。

もちろん、あまり出番がないので、今日教えていただいたようにしっかりと綺麗にしてしまっておこうと思います!
イベントはひと枠50分で、一人5点まで。
1点1点丁寧に着物を見てくださるので、あっという間に時間になってしまいます。

お直しをしてもらいたい着物などは、あらかじめこんな風にしたい!というイメージをもって行くとスムーズにお願いできるかもしれないですね。


お手入れの方法なども教えてもらえるので、とてもためになる時間でした。

そして相談のあとに少しお時間をいただき、実際にお直ししたもの、リフォームしたものを簡単に説明していただきました。


これは同じ着物!?と思うくらい素敵に変わっていて、依頼した着物をお客さまが受け取る時の感動はすごいだろうな~と勝手に想像してしまいます。

まずは、こちらの着物。

最初の色柄は、一番左のものです。

そして濃紺に染め上げたもの(左から2番目)、さらにちいさな霰のように柄をつけたもの(右から2番目)、絵柄部分は残して回りに色と柄を入れたもの(右)です。


こんなにもさまざまな表情を出せるのは、本当に職人さんの技があってのものですね。

続いてはこちらの赤い着物です。

もともとの着物の色や絵柄は一番左のもの。

それを、色を抜いてボルドーのような色味に染め上げたもの(中央)、そしてその上から絵柄の色味や細部を変えてまた異なるデザインにしたもの(右)です。

最初に見たとき、一番右と一番左が同じ着物だと思わず、何度か確認してしまいました。(笑)
それくらい、本当に雰囲気が違って見えるので驚きです。


例えば、上記の着物もそれぞれ染め方が異なるため、複数の職人さんが携わっています。

携わる職人さんが増えるほど手間がかかるので、比例して金額も高くなっていくのですね。


澤村さんは「一枚新しい着物を買った、というくらいきれいに直したいと思っています」とおっしゃっていて、本当にその言葉通りだなあ…としみじみ。

他にもバッグ、扇子、草履、財布やプレートなどなど、さまざまなものを作ることができます。

着物や帯のきれいな部分だけを使用して作ることができるので、また違った形で着物を蘇らせることが可能です。

扇子も和紙のものよりも柔らかくて高級感があり、プレートも金糸がキラキラと輝いていました。

上記以外にも、人形のお着物や、着物や帯のきれいな部分だけを切り取って加工した絵画のような作品など、いろいろな事例をみせていただきました。
専門の職人さんが多くいらっしゃるので、一度相談をしてみると、自分の要望に合ったものを提案してもらえます。
悉皆とは「ことごとくすべて」という意味。
その意味の通り、着物に関するさまざまな仕事ができる職人さんが悉皆職人です。

今回担当していただいた澤村さんも、「基本的にはお客様がどういう風にしたいかをお聞きして、要望通りに、また要望を超える提案もしながら直していくのが仕事」とおっしゃっていました。

信頼できる、着物のプロである職人さんに相談できるこの機会、ぜひ相談したい着物や帯を持参して、直接お話を伺ってみてくださいね。

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