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着物の柄の意味と種類・季節をまなぶ Vol.2 植物・動物にまつわる文様~縁起の良い吉祥文様とは

着物の柄の意味と種類・季節をまなぶ Vol.2 植物・動物にまつわる文様~縁起の良い吉祥文様とは

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普段何気なく目にする、お着物や帯の柄、文様…。そこには様々な意味や歴史が込められています。今回は植物、そして動物にまつわる文様からいくつかピックアップして、紐解いていきます。

着物や帯にはおめでたい柄や日本伝統の模様、季節を顕す植物や生き物の模様が描かれています。
これらにはそれぞれに意味があり、使われるシーンが限定されてくるものがあれば、逆に季節や時期を問わずいつでもOKな柄などさまざまにあります。

そこには、いにしえから季節を大切に愛でる日本人の感性が作り、育て上げてきた伝統が籠められています。

そこで、着物や帯の柄が語る内包された意味合いや起源とともに、その柄が着用できる季節やシーンなどをご紹介します。

百花の長といわれる「牡丹」の柄の意味と季節

百花の王、百花の長、富貴の花と言われる豪奢な牡丹は、良い前兆の顕れとして吉祥文様とされています。

百獣の王とされる獅子との組み合わせで、能にいわれがある「唐獅子牡丹」などは特にめでたく良い組み合わせです。

牡丹には、葉のある春牡丹と、冬に花開き葉がほとんどない寒牡丹があります。

そのため、自然の牡丹の姿を描いて季節をあらわした模様の着物ですと、冬から春の着用がベストで、少し早めに季節を先取りして十一月頃から身に着けるのもお洒落な着方だといわれます。

ただし他の花々とともに図案化されていたり、写実的ではなくイメージ的な描かれ方をした牡丹であれば、オールシーズンOKです。

「楓」は日本の四季の移り変わりを美しく表現。楓柄の意味と季節

日本の四季を彩る自然の中でも、代表的なもののひとつがこの楓でしょう。

赤や黄色く色づいた様子が描かれた柄は、秋に好まれる図柄です。

楓の色合いが青葉になっている「青楓」であれば、初夏に身に着けるのが良いですし、青楓と紅葉の組み合わせでは春秋ともに着用できるでしょう。

単独文様だけでなく、菊や流水などとともに描かれた美しい意匠もあります。

流水に楓をあしらった模様は特に「竜田川文様」と呼ばれ、日本の伝統的な意匠としてなじみ深いものです。

奈良県にある紅葉の名所・斑鳩を流れる竜田川に、散り落ちた楓が川面を埋める鮮やかな光景を図案化したもので、その景観の美しさは、古代の歌人・在原業平が「ちはやぶる神代も聞かず龍田川からくれなゐに水くくるとは」と詠んで絶賛したことでも知られています。

絞り染めの技法「辻が花」の柄の意味と季節

辻が花は、奈良時代から続く絞り染めの手法のことで、まず基調として絞り染めをしたあと、草花の模様を筆で描き、摺箔、刺繍などで仕上げたものです。

高度な技術で作成された優美な姿が武家社会に広まり、安土桃山時代に最も隆盛しましたが、友禅染が台頭してきたことから取って代わられるように下火となりました。

その後、近年になって初代の久保田一竹氏が失われていた辻が花の染色技法を復刻したことから、世界的にも評価されて再ブームが巻き起こり、現代では着物の柄のひとつとして定着しています。

絞り染めを主体にしているため、当然、生地には絞った跡があってデコボコしており、その立体感が辻が花の魅力のひとつとなっています。

辻が花という花があるわけではなく技法の名前ですので、模様や柄について厳密な決まりはないのですが、流れるような花の並びをベースにさまざまな小花があしらってある模様が一般的です。

伝統的で華やかな様子が祝い事にぴったりだとして、成人式の晴れの日に用いられる振袖にもたいへんな人気を博しています。

「鶴」は長寿を象徴するありがたい存在。鶴の柄の意味

豊かな生命力と長寿を象徴する縁起の良い鳥「鶴」は、幸せを祝うシーンに最適の模様です。

松や亀、瑞雲との組み合わせが多く見られ、意匠としても「折り鶴」「千羽鶴」「飛鶴」「雲鶴」など様々なものがあります。

長寿を祈ったり祝ったりするシーンにふさわしい文様とされてきました。

一度つがいになると一生添い遂げるという鶴の性質から夫婦円満の象徴にもなっており、婚礼の場にも良く合う図柄です。

鶴の鳴き声は高く天界まで届き、神様と人とを繋ぐ存在とも言われて、古来よりありがたい鳥とされてきました。

それに加え、悠々と空を飛ぶ姿や上品な立ち姿などが、日本人の感性に合ったのではないでしょうか。

吉祥文様として人々に親しく用いられてきたのは、鶴が人々に長く愛されてきた印といえるでしょう。

伝説の瑞鳥「鳳凰」の柄の意味

中国古来の思想にある、四霊または四瑞と呼ばれる四種類の瑞獣のひとつが鳳凰です。

古くは中国の春秋戦国時代に成立した書物「礼記」にある一節で、四神ともいわれて麒麟や霊亀、応龍などと並び称されており、伝説上の生き物でありながら古来より人々に親しまれています。

ゴージャスな鳥の姿をしていて、しばしばフェニックスやガルーダと混同されることがありました。

日本では、飛鳥の昔から広く知られており「鳳凰が現れるのは繁栄の瑞兆である」といわれたいうように、最高級の吉祥紋として好まれてきました。

五色の羽や長い尾っぽが特徴です。

着物や帯の柄や文様ごとにふさわしいシーンをいくつか紹介してきましたが、パターン化されているものや他の季節の植物や道具などと共に描かれることで、着用できる場面が増える場合もあります。

季節ものの時季限定には、それぞれ個人の考え方やいわれによる例外なども存在しますので、ご紹介した例が必ず通じるというわけではありません。

日本人が昔から大切にしてきた季節感や粋な物の見方、古くからの装束の歴史や動植物への造詣などによって、着物や帯の素敵な取り合わせは増えていきますので、
様々な文様や組み合わせを自身で考えてみるのも着物を着る楽しみのひとつといえるでしょう。

着物の柄の意味と種類・季節をまなぶ Vol.3 鳥をモチーフにした文様

普段何気なく目にする、着物や帯の柄・文様…そこには様々な意味や歴史が込められています。今回は動物、とりわけ日常になじみ深い鳥や縁起の良い鳥にまつわる文様から千鳥・孔雀などの柄をピックアップして紐解いていきます。

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