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長艸繍巧房の京繍を体験レポート! 世界から称賛される日本刺繍の魅力とは?

長艸繍巧房の京繍を体験レポート! 世界から称賛される日本刺繍の魅力とは?

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6月はプレミアム銀座! 今回は2019年6月7日〜11日に開かれた京都きもの市場 銀座店イベントより、和を愉しむ「世界に誇る長艸繍巧房による半衿京繍体験」の体験レポートをお届けいたします!

世界に誇る長艸繍巧房(ながくさぬいこうぼう)による半衿京繍(きょうぬい)体験
2019年6月7日~11日、京都きもの市場 銀座店において、
着物の作家さんや職人さんの特別な技術に触れる機会として「プレミアム銀座」イベントを開催。

今回は、その中で6月11日に行われた店舗イベント、
和を愉しむ「世界に誇る長艸繍巧房による半衿京繍体験」の模様を、
着物愛好家の池田千恵里さんに体験レポートしていただきました。
レポーター/池田千恵里趣味は書くこと!という着物愛好家。国内外において着物PRの経験を持つ。英国駐在時には着物でのお出掛けを常とし、自身の着姿をSNSやYouTube 等でも発信。また、ロンドンで着物ファッションショーを開催するなど、和装のPRに務めている。

長艸繍巧房(ながくさぬいこうぼう)とは

着物ファンだけでなく、エルメスや、パリコレで活躍するデザイナー達をも魅了する、世界的な巧房「長艸繡巧房」。

着物を始めたばかりでご存知ない方のために、まずは長艸繡巧房についてご紹介させていただきます。

長艸繡巧房は、1933年に京繍の工房として設立され、現在は二代目の長艸敏明氏と奥様の長艸純恵氏が継承されています。

1944年の能衣装・小袖展でヨーロッパのデザイナー、芸術家、メディアから高い評価を受け、クリスチャン・ディオールのデザイナーが「長艸敏明に影響を受けた」と発言し、国内外で話題となりました。

現在は京繡(きょうぬい)を施した着物・帯・小物・室内装飾品、舞台衣装などの制作だけでなく、祇園祭をはじめとした日本全国の祭り装飾品の修復・新調なども行なっています。

2018年には長艸敏明氏が「京の名工(京都府伝統産業優秀技術者)」にも表彰されています。

京繍(きょうぬい)について

京繍とは、絹織物もしくは麻織物に、絹糸、金銀糸などを用いて刺繍を施す、伝統工芸。繊細で華麗な表現が特徴です。

飛鳥時代に仏教とともに繍仏(刺繍で描かれた仏画)として伝わり、平安遷都で京都にその技術が伝えられると、京の都には繡技の職人を抱える縫部司が置かれ衣服の装飾に用いられ始めました。これが現在の京繡の起源だそうです。鎌倉時代に武士の装束などに施されることで一挙に増え、やがて室町時代の能衣装、安土桃山時代から江戸時代へと続く小袖と、華ひらいたのだそう。

江戸時代中期、友禅の手法が広まるまで、衣装を飾るのは、箔と絞り・刺繍が主役。染めの着物の歴史より、織りや刺繍の着物の歴史の方がずっと長いそうです。

今回はその長艸繡巧房より、長艸 純恵(ながくさ すみえ)氏、長艸 歩(ながくさ あゆむ)氏を講師にお迎えして、
京繍の体験をさせて頂けるという、なんとも嬉しいイベントでした。

長艸繡巧房の能衣装と小袖を間近で堪能!それはもはや美術館。

手先が器用とは言い難いわたくしですので、自分で着物などを繍うことはしませんが、
母の趣味が刺繍だったこともあり、昔から刺繍は大好き。

是非ともその京繍の世界を覗かせて頂きたいと常々思っておりました。

ご夫妻は「徹子の部屋」にもご出演。やや⁈ミーハーな我の心をも満たすべく、
楽しみに参加をさせて頂きました。



お部屋には、なんと!この日の為にわざわざ持ってきて下さった
能衣装と小袖が掛けられ、間近で拝見することができました。

こちらは能衣装。

繊細な京繍が贅沢に施された逸品です。

この美しい刺繍に、いったいどのくらいの時間が
費やされたのでしょうか。

こちらもやっぱり素晴らしい。

こんなお着物を間近で見られるなんて、
美術館で鑑賞させていただくよりも贅沢!

体験イベントならではの特権ですね。

京繍歴50年の純恵先生(右手)は、柔らかな物腰でお優しい目元が印象的でした。

雲の上のような存在でありながらとても気さくなお人柄で、終始笑顔。

刺繍というのは一針ひと針丁寧に繍う、大変根気の要る作業。

積み重ねてゆくうちに、驚くほど心も成熟してゆくのでしょうね!
覚えの悪い私にも、青筋を立てることなく、優しく教えて下さいました。

そしてくりっとした大きな瞳を真っ直ぐとこちらに向けて、力強く通る声で、一生懸命教えて下さった歩先生(左)。

長艸家のお嫁さんなのだそう。純恵先生と同様に物腰はとても柔らか!
ことある毎に「ありがとうございます」と、こちらが恐縮する程なんとも謙虚で。

刺繍と共に、その姿勢も学ばせて頂きました。

いよいよ京繍(きょうぬい)の体験!

あらかじめ図案の描かれた半襟を、オリジナルの刺繍台にセットしていただきスタート!

黙々と無心で没頭しながらも、

時折繍う速度を緩めながら雑談に興じる。

不器用な私には完全に手を止めなければ会話なんぞ楽しめませんが、皆さま器用に楽しんでらっしゃって、

それはそれは羨ましかったです。

お喋りも、こういったお教室での楽しみのひとつですね!

見ていると簡単そうですが、やってみると、我ながらびっくりするほど上手くゆかず。

線の上へと目掛けた針が、全く別の所から出てくる始末。これを繰り返していたので恐ろしく時間もかかり、ここまでも半分以上先生が繍って下さいました。

お任せしている間、私の視線はお着物の燕(つばめ)に釘付け!先生がお繍いになったそうです。素敵でした。

その後も何度となく助け船を出して頂きました。(汗)

歩先生にも繍い進めて頂いて。(汗)

今回使ったのは白糸と銀糸の2種類。

手間のかかる絹糸を縒る(よる)作業は、
有難いことに、先生があらかじめ済ませてきて下さっており。

綺麗な刺繍糸を使っての幸せなチクチクタイムでした。

仕上げは純恵先生が直々にアイロンを掛けて下さいました。

京繍体験を終えての感想

線を縫うだけでも難しいというのに、立体感や配色を考えた糸づくりから、多彩な繍いの技法での表現。

当たり前のことながら、プロの作品作りにはいくつもの工程、技があるんですよね!
わたくしなんぞが先生のことを “凄い!”と言うのもおこがましいと感じるほどの凄さ。

実体験があるのとないのとでは 、感じる奥行きも変わってくるというもの。

今回、実際に繍うことを経験したことで、その “凄い!” を、立体的にとでもいいましょうか、しっかりと感じることが出来ました。

こういう経験を積み重ねて、自分の感度もより高めていきたいなぁ。
そんなことを考えるひと時でもありました。

これからは、今まで見ていた感覚とはまた違う目で、着物や帯に施された刺繍を見ることになりそうです。


学びの機会を頂き、有難うございました!

京都の刺繍を体験したい方へ!長艸繡巧房の体験教室ご紹介

長艸繡巧房(ながくさぬいこうぼう)さんでは、定期的に刺繍の教室を開かれています。
京繡を一度してみたいという方のために初心者向けの一日体験教室もあります。

ご興味のある方は、京都観光がてら、日本の伝統工芸体験はいかがでしょうか?

詳しくは公式ホームページをご参照くださいませ。

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