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産地の方々との交流に感動! 「オフィシャルアンバサダーが伝えたい大島紬の魅力」vol.3

産地の方々との交流に感動! 「オフィシャルアンバサダーが伝えたい大島紬の魅力」vol.3

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大島紬を着れば着るほど、着心地の良さとすばらしい織り技術に取り憑かれたようになり、いつの間にか枚数も増えました。そうして、「いつかは大島紬の産地である奄美大島に行ってみたい。大島紬をつくっているところを見てみたい」そんなことを思うようになりました。

大島紬アンバサダー・プロジェクト 秋葉代表と奄美大島で

生産反数が減少の一途をたどる大島紬。その存続を危ぶむたった一人の熱い想いから2020年にはじまったのが「大島紬アンバサダー・プロジェクト」です。個々のアンバサダーのSNSでの発信が全世界の大島紬ファンをつなげ、産地を応援しています。

こんにちは。
きものLifeプロデューサー・星 君枝です。

大島紬を着れば着るほど、着心地の良さとすばらしい織り技術に取り憑かれたようになり、いつの間にか枚数も増えました。そうして、

「いつかは大島紬の産地である奄美大島に行ってみたい。大島紬をつくっているところを見てみたい」

そんなことを思うようになりました。

そして実は昨年、(vol.2でも少し触れましたが)夢が叶って二度も奄美大島に行く機会をいただいたのです!

今回は、大島紬のつくり手さんや産地の方々との交流の様子をご紹介いたします。

奄美大島紬の織元を訪ねて

前田紬工芸

秋葉深起子代表と前田紬工芸さんをご訪問
大島紬アンバサダー・プロジェクト秋葉深起子代表と前田紬工芸さんを訪問

本場奄美大島紬の最年少伝統工芸士(締め加工)の前田圭佑さんにお話を伺いました。

前田圭佑さんにお話を伺いました。

「大島紬は二度織る」とお聞きになられたことがある方も多いでしょう。

一度目は絣糸をつくるために締め機(しめばた)で織り、二度目は布地をつくるために絣合わせをしながら織ることをいいます。

大島紬の絣筵 前田紬工房
大島紬の絣筵 前田紬工房

締め機では、絣となる箇所へ防染(※)するため、その部分を木綿糸で締め上げて絣筵(かすりむしろ)を織り上げるのです。

※ぼうせん:染料が入るのを防ぐこと

それまでは締め機がどんなものなのかがよく分かっていませんでしたが、前田さんのお話を伺ってやっと理解することができました。絣筵は、図案通りに柄を一列の点で柄をあらわすために織り上げていくのです。

図案の一部を見せていただきました。

大島紬の図案 前田紬工房
大島紬の図案 前田紬工房

締め機で織る糸がこちら。絹糸16本をイギスという海藻の糊で1本に固めた糸だそうです。

16本にする理由は、一度に16反分の絣糸をつくるため。ですので、作品により本数は前後するとのこと。

大島紬締機の糸 前田紬工房
大島紬締機の糸 前田紬工房
絣筵をつくる手の込んだ技術だと驚きました。

それにしても経糸(たていと)・緯糸(よこいと)ともに絣筵をつくるとは…本当に手の込んだ技術だと驚きました。

古典柄の大島紬 前田紬工房
古典柄の大島紬 前田紬工房

こちらは、古典柄の大島紬。日や田などの文字がモチーフになっているそうです。

龍郷柄大島紬 前田紬工房
龍郷柄大島紬 前田紬工房
龍郷柄大島紬 美しいキモノ 前田紬工房
龍郷柄大島紬 『美しいキモノ』 前田紬工房

『美しいキモノ』にも掲載された、大柄の龍郷柄も見せていただきました。

左の反物は藍色、右の反物は配色をグレーに変えているそう。

写真では分かりにくいかもしれませんが、少しの色味が違うだけで印象も変わります。

大島紬村

大島紬村

大島紬村は広い敷地の中に大島紬の製造工場と観光庭園があり、奄美の自然が楽しめる長閑な場所です。

泥田(どろた)では、職人さんが「泥染め」の最中でした。

大島紬村 泥染 泥田

製造工場では、泥染めから機織りまでの全工程を、ガイドさんに説明していただきながら見学することができます。

大島紬村 テーチギ

泥染めは、染料となるテーチギ(車輪梅)をチップに砕き、煮出した染液で染めていきます。

「テーチギの染液で20回染める→泥田で泥染め1回」が1クール。

この作業を何度も繰り返すことで、茶色→茶褐色→焦茶→黒と色が変化していくのです。

大島紬村 テーチギ 泥染 大島紬

泥染めで黒く染まるのには、理由があります。

テーチギに含まれている「タンニン」の成分と、奄美大島の泥に含まれている「鉄分」とが結合して茶褐色に染まっていくのです。

先述の作業を5クール以上重ねないと、奄美大島の泥染め特有の味わい深い黒にはなりません。すべて、職人さんの手作業にて、大変な手間と時間をかけて染め上げられているのです。

泥染めができるのは世界で唯一、奄美大島だけ。

泥染めをした糸で織った生地は、独自のしなやかな風合いになります。

また大島紬は約40もの工程を経て製品になります。

大島紬村 奄美大島紬製造工程
大島紬の製造工程

締め機はかなりの力が必要なので男性が織るそうですが、最近ではコンプレッサーを使用する機もあって、女性が織る場合もあるとのこと。

大島紬村 締め機 大島紬
大島紬は二度織るといわれている一度目の締め機

織り上げた絣筵は、染色する絣部分を解く作業を経て擦り込み染色へ。

絣の列ごとに色を擦り込んで染色します。

大島紬村 大島紬擦込み染色

染色のあと、16本に束ねていた糸を1本ずつ解きます。

大島紬村 大島紬擦込み染色

そしていよいよ、最終工程の機織りへ。

機織りでは、経糸・緯糸の柄を合わせながら織りあげていくのですが…

7〜10cm織り進むとそこで1時間ほどをかけて絣合わせの微調整が必要となります。そのため、一日に織れるのは約30cm。1反約13mを織るのには40〜50日かかり、柄によってはもっともっと時間がかかるものもあるそう。

大島紬村 大島紬 機織り

工程を見学することで、大島紬は手間と時間と職人さん一人一人の想いが込められてつくられていることをさらに強く実感し、大変感動いたしました。

こんなにも手の込んだものを身に纏うことができて「とてもありがたい」と心から思いました。

夢おりの郷

こちらは、養蚕から機織りまでの全工程を社内で一貫生産、染め体験・機織り体験・着付け体験もできる織元さんです。

新しいデザインや試みにも積極的にチャレンジされていらっしゃいます。

夢おりの郷 大島紬 機織り
熟練の織工さんがリズム良く機織りをしていました

南 晋吾社長とは、2018年のきものサローネに出展された「100体コーディネート」の着付けを担当させていただいたご縁があり、昨年のきものサローネでもお会いしていました。

2月に伺った際にはインスタLIVEにもご協力いただき、製造工程の流れや商品のご紹介をいたしました。

南 晋吾社長と
白大島と多織名古屋帯をコーディネート

インスタLIVE終了後には、私好みの白大島とオリジナルの博多帯をコーディネートして着装いただきましたよ。

夢おりの郷 大島紬アンバサダー 泥染

10月には、オフィシャルアンバサダー3名で製造工程の見学と、藍染め・泥染め体験をいたしました。

アンバサダーを代表して近藤宏美さんが染め体験を。

染めをするときは汚れるので洋服で作業をするそうですが、この日は特別に、大島紬を着用したまま作業をしてくださいました。

製造工程を見学することで、工程そのもののことだけでなく、どれだけつくり手さんの想いが込められているのかを知ることができます。

大島紬を着用したまま作業
製造工程を見学
写真左=擦り込み染色をするために泥染めした絣筵(かすりむしろ)の絣部分の木綿糸を解く工程。ちょっとでも絣糸を傷つけてしまうといけないので見ていても緊張します。
写真右=左の工程後に一列ごとに解いて図案通りに擦り込み染色をしていきます。この工程も、色を間違えたり列を間違えたら大変です。

お父様の南祐和会長からもお話を伺ったのですが、とてもおもしろおかしく楽しい方で、笑いっぱなしのひとときでした。

興紬工房

念願叶って、桜柄の大島紬を着て、織元である興紬工房さんにお里帰りができました。

興紬工房の興 辰雄社長、奥様のほずみさんと
興紬工房の興 辰雄社長、奥様のほずみさん

私が大島紬を大好きだと自覚したのは、この大島紬がきっかけでした。

大島紬の知識もまだ乏しかった約10年前。ひと目見た時に「これが大島紬?こんな綺麗な大島紬ってあるの?!」と驚いたのを今でも覚えています。

興 辰雄社長とは初対面でしたが、奥様のほずみさんとはその時からのご縁です。ほづみさんのお話を伺って大島紬への情熱とお人柄に惹かれてしまいました。

優秀作品賞に選ばれた大島紬
2021本場奄美大島紬グランプリ大会で特殊・新商品・絵羽部門 優秀作品賞に選ばれた大島紬

興紬工房さんは伝統柄もお得意ですが、どこにもないものをつくろうという思いから独創的なデザインと総絣の技術を活かし、女性がワクワクする大島紬をつくっていらっしゃいます。

興紬工房 大島紬

私が着用している彩総絣の大島紬と姉妹の桜柄も素敵です。

着用している彩総絣の大島紬と姉妹の桜柄

大島紬美術館

ビストロ奄味にて肥後社長と
ホテルティダムーン内ビストロ奄味にて肥後社長と

運営されている『ホテル ティダムーン』併設の大島紬美術館を、肥後勝代社長にご案内していただきました。

後ろの額絵はなんと、尾形光琳の『紅白梅図屏風』を12マルキの大島紬で織り上げたものだそう!

大島紬美術館にはオリジナリティの高い大島紬や帯が並んでいました。館内は撮影不可のため、素敵な大島紬を写真でお見せできなくて残念ですが、大変希少な15マルキの大島紬や、金箔や刺繍を施したものなど、既成概念にとらわれない女性チームで商品企画・開発をされているとのこと。

女性が好きなイメージ、女性が着たいものを形にされている織元さんです。

紅白梅図屏風を12マルキで織り上げたもの
奄美の食材を使った美味しいランチ

ホテルのレストラン『ビストロ奄味』では奄美の食材をたっぷり使った彩りも綺麗な美味しいランチがいただけます。

海に面しているホテルのロビーからは奄美の海が望めます。

ロビーからは奄美の海が望めます
肥後社長と大島紬オフィシャルアンバサダーのみなさま
本場奄美大島紬協同組合120周年記念式典の日。奄美空港に到着後、大島紬美術館に向かいました。肥後社長と大島紬オフィシャルアンバサダーのみなさまと。

10月にもオフィシャンアンバサダーの飛田久美子さん、近藤宏美さんと伺いました。短時間でしたが、大島紬美術館を鑑賞し、うっとり、ため息の連続でした。

本場奄美大島紬協同組合

牧絹織物 牧雅彦社長と
牧絹織物 牧雅彦社長と

さすがの大島紬の着こなしで貫禄のある出立ちは、本場奄美大島紬協同組合理事長を務められている牧絹織物の牧雅彦社長。

西郷隆盛の奄美大島の妻『愛加那』ゆかりの織元さん。

現在の大島紬は生糸で織っていますが、昔ながらの紬糸で織った大島紬も手掛けられています。

大島紬コンテストの後援などにもご協力いただいています。

本場奄美大島協同組合理事長として、技術者の高齢化、後継者不足などさまざまな課題を抱えていらっしゃいますが、若手の機屋さんを中心に新しい商品づくりにも積極的に取り組まれています。

大島紬アンバサダー・プロジェクト主催「大島紬コンテスト」の後援などにもご協力をいただいています。

本場奄美大島紬技術専門学院

栄夏代講師と

本場奄美大島紬の織り手を育成する専門学院は、本場奄美大島紬協同組合の建物に併設され、栄夏代講師がご指導されています。

鹿児島県外から移住されて学ばれる方もいらっしゃるそうですよ!

こちらでは機織り体験ができるので、私たちも体験をいたしました。

織工さんが織っている様子を見ていると「スー、トントン」とリズム良く織っていますが、やはり簡単ではありません。

手と足とを考えながら動かさないと間違えてしまいます。

機織り体験
栄夏代講師から指導を受けながら機織り体験をする大島紬オフィシャルアンバサダー飛田久美子さん
生地が増えていくのも楽しく感じました

それでも続けて織っていくと、いくばくかは自分のリズムで織られるようになった気がして、ほんの数cmでも、織った生地が長くなっていくのも楽しく感じました。

昔はどの家でもお母さんが機織りをする音が聞こえていたそうですが、今ではそんな家庭もだいぶ少なくなり、小学校では機織りの社会科見学の機会を設けているそうです。

大島紬は鹿児島にも

大島紬の産地は奄美大島だけではありません。鹿児島にも多くの織元があります。

本場大島紬織物協同組合

本場大島紬織物協同組合の理事長を務められているのが、鹿児島市の織元、大瀬商店の大瀬輝也社長。

大島紬アンバサダーのオンライン勉強会では講師を務められ、大島紬アンバサダー・プロジェクト主催「大島紬コンテスト」の後援などにもご協力をいただいています。

昨年、今年と東京の百貨店の催事に出展された際にお話を伺う機会がありました。これからの大島紬をどうしていったらいいのか、盛り上げていくにはどうしたらいいのか、など積極的に活動されていらっしゃいます。

大島紬を語ると止まらなくなるほど語ってくださるので、ファンのお客様が多いのも頷けます。

私は鹿児島市を訪れたことがありません。いつの日か鹿児島市の織元さんを訪問する日を夢見ています。

百貨店の催事でお話を伺う

奄美大島を代表するシマ唄の唄者

さて、奄美大島の魅力をもう少し。

シマ唄を聴きながら、並びきれないほどのお料理がとっても美味しいお店『吟亭』では、女将であり奄美を代表するシマ唄の唄者、松山美枝子さんと、お孫さんの唄者、平田まりなさんの共演を楽しみました。

松山美枝子さんと平田まりなさんの共演

シマ唄の最後には、お店のお客様たちも一緒に踊ります。

大島紬アンバサダー・プロジェクトの秋葉代表も「勝手に体が動く〜♪」と踊っていました。

平田さんがお召しの大島紬はもしかして「割り込み絣」かも?と気になったので、見せていただきました。

平田さんがお召の大島紬

おばあさま(松山美枝子さん)の割込み絣の大島紬だそうです!

割込み絣は今ではほとんどつくることができない希少なもの。「大切に着ていきたい」と話されていました。

つくり手、産地の想いを着る側として受け継ぐ

実際に織元さんを訪問して分かったのは、古典柄や伝統柄を守りつつも、それぞれの織元が独自の創意工夫や新しいチャレンジをされていて「個性を大切にされている」ということ。

これまで、着物の展示会でつくり手さんからお話しを伺う機会もありましたが、実際につくっている工程を自分の目で見ることで製造工程を体感し、手間を惜しまない技術のすばらしさ、職人さんの大島紬に対するひたむきな想いを強く感じました。

実際につくっている工程を自分の目で見る

通常大島紬といえば「普段着、おしゃれ着」の位置づけですが、奄美大島では本土と違い「特別な日=ハレの日の装いで着るもの」だそう。

ですので、島では大島紬を着た現地の人を見かけません。それは、大島紬の産業をとても大切にしているからこその文化なのでしょうね。

大島紬 奄美大島 大島紬アンバサダー

あなたの大島紬にも、つくり手さんの想いが込められていることでしょう。
ぜひ、タンスから出して大島紬の緻密な織に目を凝らし、すばらしさにふれてみてくださいね。

これまでとは違った視点で、お母様、おばあさま、または譲り受けた方からの想いを受け取ることができるかもしれません。

大島紬の特徴

もったいない、と思う方もいるかもしれませんが、「着倒しきもの」こそ、着心地のいいものにしなくては続きません。大島紬は軽くて丈夫。皺にもなりにくいので、お出かけにもぴったり。

秋単衣は、さらっとした縞大島と軽い八寸帯で始めたい

『きものが着たくなったなら』(技術評論社)の著者・山崎陽子さんが綴る連載「つむぎみち」。おだやかな日常にある大人の着物のたのしみを、織りのきものが紡ぎ出す豊かなストーリーとともに語ります。

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