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織の原点・ラオスで作った帯のお話 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.8

織の原点・ラオスで作った帯のお話 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.8

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柄はどことなくアジアなのに、配色がしとやかで品がよく、きものにもしっくりくる感じ。帯にするには細かい模様も、柄のサイズを拡大させることで前帯やお太鼓部分にしっくりなじみます。なじむけれど、これまでにない感じ!それにしても、これが織なの!?

「ラオスが今あついんですよ」と商品部の課長・野瀬さんに言われて、地球儀を思い浮かべ、ラオスラオス、どこだっけな……そうだ、南の方だもの、それは確かに暑いよね、と思ってしまいましたが、「あつい」は気温ではなく情熱という意味の熱さでした。日本に伝わってきた織のルーツをたどっていたら、ラオスに行き着いたのだそうです。
ラオスは、メコン川が横断する、ベトナムとタイに隣接する東南アジアの国で、首都はヴィエンチャン。フランス植民地時代の建物が有名で、少数民族や山岳民族が数多く存在し、古くからの伝統や染織の文化が色濃く残る国です。民族衣装にも織物が用いられ、腰に巻いたり肩にかけたりして、その布の美しさを誇っています。

ラオスの織物の技術は世界的に見てもレベルが非常に高く、特に図案があるわけでもないのに、呼吸をするのと同じような、おしゃべりするのと同じようなごく当たり前の感覚で、驚くほど緻密な機織りをして(しかも手機!)、柄を表現していく人たちが大勢いるのだとか。
その柄の精緻さと雰囲気に圧倒された野瀬さんは、これを日本のきものに合わせる帯にしたい!と思ったのだそうです。ただ、ラオスの織物そのものは、ビビッドな原色が多いので、日本のきものに合わせやすい雰囲気の色を指定して、別注で織ってもらうことに。試行錯誤を続けて7年目、ようやく完成したという作品を見せていただきました。
柄はどことなくアジアなのに、配色がしとやかで品がよく、きものにもしっくりくる感じ。帯にするには細かい模様も、柄のサイズを拡大させることで前帯やお太鼓部分にしっくりなじみます。なじむけれど、これまでにない感じ! それにしても、これが織なの!?と目を疑いたくなるほどの、まるで浮かび上がるような存在感の浮き織と絣を駆使した手機の布の柄の細かさに、心底驚かされました。

ラオスの人たちは穏やかで、すぐに「ポーペンニャン」と言うのだそうです。ポーペンニャンとは、「心配ないよ」の意。それを聞いて、今はなかなか海外旅行ができるような状況ではありませんが、いつかラオスに行って、実際に織っているところを見てみたいと思うようになりました。穏やかで優しい人々が住むという異国に思いをはせながら、世界の安寧を願っています。

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