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京都きもの市場「着物・帯の買取サービス」 査定のポイントをバイヤー竹中が解説!

京都きもの市場「着物・帯の買取サービス」 査定のポイントをバイヤー竹中が解説!

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年々高まる着物の買取需要。気になる買取査定のポイントや知っておくべき基本的な知識について、社内取材を行いました。買取に出すことを検討されている方、価値ある中古着物を購入したい方、ぜひともご覧くださいませ!

京都きもの市場の中でも需要が徐々に増えつつある「着物の買取サービス」。
買取にあたっての査定ポイントや、掘り出しものの見分け方など…気になる点を買取サービスの責任者・竹中に聞いてみました。
査定のポイントを知っておくと、大切な着物も安心して預けることができますし、より高く買取をしてもらえる可能性もありますよ。

竹中 浩一 プロフィール

1960年 京都生まれ・家業は長板友禅
1982年 室町の帯地卸問屋・岡慶へ入社
1994年 岡慶を退社
1995年 京都シルクへ入社
2000年 京都きもの市場・創業者メンバーとして転籍
    「まいどおおきに」バイヤー店長に就任
2015年 お客様買取サービス責任者として従事

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京都きもの市場 竹中

竹中次長紹介写真

実はひっそり行っている、京都きもの市場の買取サービス。

―――あまりサイトのトップでは大々的に告知していませんが…

そうなんです。実は自社会員様限定のサービスとして、ここ4,5年ほど着物の買取を行うようになりました。
自社ホームページで会員登録していただくと、マイページに申し込みのページリンクが出てきます。

―――ここ4,5年ということは、「京都きもの市場」が開設した2001年にはまだなかったサービスなんですね。

そうです。
開設当初は、まさかここまで需要があると思っていませんでした

京都きもの市場買取サービス画面
自社会員に登録してマイページにログインすると、アイコンが出てくる。

世の中には着る人を待つ着物がたくさん眠っている!
お客様からの持ち込みがきっかけで買取サービスがスタート。

―――始めたきっかけは何だったんでしょうか?

もともと早い段階で、京都きもの市場では、「中古品(すでにお仕立てされ着用されたもの)」や「新古品(仕立て上げたが未着用のもの、あるいは未仕立ではあるが購入から時間が経ってしまったもの)」の着物の取り扱いをしていました。
ただそれらの商品は、取引先である目利きのプロが選別したもの。
目を引きやすいブランド物・有名作家の方の中古品が必然的にメインになります。

解説する竹中次長

ある時、着物関連の書籍も出版されている、さるライターの方から、
「祖母や母、私の着ない着物が結構あるの。折角だから信頼できる京都きもの市場さんで引き取ってくださいませんか?販売していただいても良いですし。」
というお申し出をいただきました。

頂戴した10着ほどのお着物や帯は、有名作家さんのものから、作者名が分からないものまでさまざま。
一般的な販売価格と比較しながら査定を行い、試しにサイト上にアップしてみたところ、予想以上に反響を得ました。
すぐ売り切れてしまい「もうないんですか?」とお問い合わせをいただいて…

その時初めて「まだ世の中に埋もれていて、買い手を待っている着物が沢山ある」ということに気づかされました。
それが2015年12月のことです。

―――そこから着物の買取サービスが始まったんですね。

初めは細々とでしたが、現在では多いとき、週10~15件お送りいただいています。

特に多い時期は、引越のある3~4月、衣替えの6月、大掃除のある年末。
基本はお送りいただいたら即日で査定をさせていただきますが、忙しいときはどうしても1週間お待ちいただくこともありますね。

商品はまとめていくら、ではなく、必ず1点1点分けてお値段をおつけして、メールでご連絡しています。
査定価格にご納得いただけない場合も、「やっぱり自分で着ようかな」と思われた場合も、送料無料にてご返却しています。
大切な着物を査定に出していただくので、安心して京都きもの市場に依頼ができるような仕組みを整えました。

買取商品を見せてくださる竹中次長

―――どんなお着物が届きますか?

種類は本当にフォーマルからカジュアルまで様々です。
訪問着や振袖などの着物だけでなく、帯も袋帯・名古屋帯問わず査定にお送りいただきます。
帯締め・帯揚げなどの和装小物を査定にお送りいただくこともあります。

京都きもの市場買取商品の保管棚
この棚全てが買取させていただいた商品!「これでもまだ少ない方ですよ~」と竹中次長。

お送りくださるお客様は主に2パターンに分けられます。
ご自身では着物を着用されないため、お母様・お祖母様の着物を「もったいなくて…」とお送りくださる方。
そしてご自身でお召しになった着物を「昔のもので似合わなくなってしまった」「箪笥に入りきらなくて」とお譲りくださる方、ですね。

後者の方は着物好きな方が多く、買取のお支払いを弊社のポイントに変えて、そのまま新たにお買い物してくださる方もいらっしゃいます。

何度も査定に送ってくださる方もいらっしゃいます。
現在利用されている方の7~8割がリピーターの方ですね。

―――リピーターの方が多いと、安心感がありますね。着物と帯の割合はどのくらいですか?

総商品の内訳は帯:着物が7:3くらいですね。
ただ帯は寸法にあまり左右されないことが多いので、回転が早いです。

お手持ちの着物、どこをチェック?
買取のポイントは「サイズ」「生地の状態」「色味」「ブランド」

―――寸法の話が出ましたが、着物の買取、となるとやはりネックになるのがサイズの問題ですよね。

そうですね。
査定のときにもまずはサイズを確認するようにしています。
身丈は4尺(約152cm)以上、裄は1尺7寸3分(約66cm)以上ないと、現代の方の平均的な体躯の方に合わせるのは厳しく、査定の金額が下がってしまう傾向にあります。
やはり昔の方は背丈が小さく、古い着物はサイズの合う方が少なくなってしまいます。

買取商品の査定・寸法確認

ただ身丈はおはしょりで+10cm調節できますし、裄は袖の部分に縫い込みがあることもある。縫い込みが十分にあれば裄直しもできますので、一概にダメとは言えません。

ちなみに袖の長さは、古い着物の方が逆に長めですね。
現代の着物は1尺3寸前後が一般的ですが、昔の着物は1尺4寸が平均と言われています。

―――帯もサイズの問題があるんですか?

着物ほどではないですが、じつは作られた時期により長さが異なります。
帯は昭和53年ごろに、標準となる全長が切り替わったんです。
日本人の平均身長が伸びるにつれて、標準ウエストもお太鼓の大きさも大きくなります。
そこでもともと4.08mが標準だった帯の全長を、4.35mとしたのです。

購入されるときは、巻き方である程度調節できるものの、着物に慣れていない方には注意が必要ですね。

―――他に買取査定の際に見ているポイントとは?

ずばり「生地の状態」「色味」そして「ブランド」ですね。

生地の状態は、表地・裏地両方拝見します。

表面は色のヤケ(日焼けによる退色)や星(絹が元の色に戻ろうとして、斑点のように色が抜けてしまうこと)がないかを良く見ます。
上前部分が特に汚れやすいため、査定の際には注意深く確認しています。

買取商品の査定・表地確認1
買取商品の査定・表地確認2
表地の確認。この着物は上前がキレイですね。

裏面は胴裏の色が黄色や茶色に変わっていないか。
そして衿や衿の裏側が汚れていないか。

買取商品の査定・胴裏確認
裏面のチェック。この胴裏は白くてキレイな状態ですが、汗や皮脂がしみこんだまま放置してしまうと、まっ茶色に変色してしまうことも…。

シミは悉皆(クリーニング)で落ちることもあるのですが、色が抜けてしまったり変わってしまっていると、そのままで着ていただくことは難しいですね。

また生地のひっかけにも注意したいところです。

あとは「色味」。生地の色の古さ・新しさを見ます。
着物は洋服ほど流行り廃りは大きくないですが、どうしても「古っぽい色味」というのは存在します。
鮮やかなピンクやオレンジの着物や帯はアンティーク調として合わせるには抜群なのですが、現代トーンのコーディネートでは合わせにくいため、査定の金額が落ちてしまいがちです。

八掛の色味も、鮮やかな色味の方が古い時代感が強調されるため、査定価格としては下がってしまう傾向にあります。

―――査定で「ブランド」はどのように確認されますか?

一番確実なのは、仕立てた時に一緒についてくる残布を同封していただくことです。
証紙がついていれば、確実な証明になります。

買取商品の査定・証紙確認

ただもし紛失していたとしても、確認方法が無いわけではありません。

着物であれば、衿の表や裏に制作者の落款があることがあります。
帯であれば、手先の折り込み部分に、制作工房名が縫いこまれていることも多いです。

買取商品の査定・落款確認
衿先に附された落款

落款は各地の組合から落款帳をいただいたり、社内で商品に詳しい者が独自にまとめた資料があるので、それを見てひとつひとつ調べていますね。

買取商品の査定・落款資料_加賀友禅
組合からいただいた落款帳
買取商品の査定・落款社内資料_久保田一竹氏
社内で細かくまとめている落款資料

落款も工房名も分からない場合や証紙が剥がれてしまっている場合は、現在弊社にある商品と作風を比較して確認を行います。

これはお客様からお持ちこみいただいた時点では証紙が剥がれてしまった九寸帯なのですが、現在弊社内にある商品の織り方、素材感、使われている色味などから鑑定して、宮古上布で有名な新里玲子先生の作品であることが分かりました。

買取商品の査定・新品との比較_新里玲子氏
右の絣のものがお持ちこみいただいたもの。左奥のものが弊社保管の作品。

ただそれでも確証が取れないもの、見分けがつかないものは、残念ながら低いお値段の方の査定が優先されます。
結城紬と本結城、牛首紬と牛首紬風、黄八丈と黄八丈風の置賜紬などは、証紙がないとなかなか見分けがつきません。

だから着物や帯に証紙があれば必ず残して置いてくださいね。本体じゃないし、と捨ててしまってはダメですよ!

査定担当のイチオシの「お買い得品」は?

―――このようなチェックを経て査定・買取された着物や帯が、サイトに出品され、今度はほかのお客様が購入できるようになるんですよね。

そうです。そうやってお客様からまた別のお客様へ、商品がめぐっていくお手伝いができるのが、この事業の面白いところですね。
また新品と比較するとお手頃なお値段ですので、これから着物に挑戦してみよう、という方にも購入しやすいと思います。

―――査定担当目線で、「これはお買い得!」という商品はありますか?

お勧めは、20年前頃に制作された九寸名古屋帯です。
凝った帯が多く作られています。

織り方にこだわったもの、色で遊んでみたもの…現代では採算が合わないため、作られなくなってしまったものも多いんです。

新品で1万円台のものだと、無難で落ち着いた色味や織り方のものになってしまう。
それが中古のお品物だと他では見られないようなものが、1万円以下で沢山揃っているんです!

おすすめの買取商品・縦錦の九寸名古屋帯
フォーマルな席に着用できるような菊柄の九寸名古屋帯。
非常に手間のかかる経錦の技法を用いており、新品で1万円以下のものはまず見当たらない。
おすすめの買取商品・漆箔の九寸名古屋帯
漆箔の糸で織られた九寸名古屋帯。織り方はふくれ織の技法を用いている。

着物はベーシックなものを買って、帯で凝ったものを揃えて遊ぶということが出来るので楽しいと思いますよ。

―――今、流行っている色味、というのはあるのでしょうか?

2、3年ほど前までは、全体的に落ち着いたトーンや、帯と着物・帯揚げ・帯締めの色系統を合わせる同系色コーデが人気でした。
ただ今はもっと自由になってきている印象を受けます。

若い方の中でも「着物を着たい!」と思ってくださる方が増えて、それにつれてビビッドな色合いの着物も復興してきています。
色だけ取り出して見てしまうと奇抜なのですが、合わせて見ると意外と悪目立ちしません。

とにかく色々な着物と帯をあわせてみること。
最初は帯に着物をあわせていくよりも、着物に帯を色々合わせてみる方が簡単です。

おすすめの買取商品・鮮やかな黄緑色の袋帯
鮮やかな黄緑色の袋帯。
単体だと派手に見えますが、暗めの地色の着物と併せると上手い具合に差し色になるんです、と竹中。
買取コーディネート例_ビューティーEXPO
上の組み合わせは2020年始めに福岡で行われたビューティーEXPOでモデルさんに着用していただいたセットの1つです(写真一番右)。

もし「この着物にはどんな帯を合わせたらいいのか分からない」ということでしたら、メールやLINE@サービスでも、ご相談可能です。
今は画像のやりとりが簡単ですから、新しい着物屋に入るのはちょっと敷居が高いな…という方にも、気軽にご相談いただけますよ!

お客様のお持ち込みからはじまった買取サービス。
棚にずらりと並んだ着物や帯から、現代の「着物の買取」の需要度の高さが伺えました。
大切に着られたお着物が、めぐりめぐって別の方のお手元に届き、また楽しい着物ライフのパートナーとなる…その手助けを京都きもの市場でできれば幸いです。

愛犬パピ(パピヨン)も登場する竹中のTwitterもお見逃しなく!

買取サービス担当・竹中写真
ライター写真・世古

聞き手・取材 / 世古友紀奈

京都きもの市場 社員。
2012年新卒入社後、総務を中心に一貫して社内後方業務に携わる。
趣味は食べることとボードゲーム。
目下の目標は、社販でつい買ってしまったかわいい帯留を生かすコーディネートをつくること。

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