まずは、心地よい緊張感と共に初々しい佇まいで登場した長濱ねるさんの装いから。

繊細な雰囲気の彼女にあえて託された強めの印象のキモノスタイル。深みある大人の赤に合わせられた、濃淡のグレー地に赤い木立柄の帯とのリンク感が洒落た仕上がりです。

半衿や足袋もモノトーンで色調を同じくし、帯揚げと帯締めの水色でアクセントを。

続いて、登場したのはヴァイオリニストの枝並千花さん。その堂々たる雰囲気と目力で会場を圧倒します。

氷割れ文様のキモノと帯。小物や半衿、長襦袢まで墨濃淡で統一したモノクロームで力強い印象を表現したコーディネートが、とてもお似合いでした。

3人目の登場となった唐田えりかさんの大人可愛いスタイルで印象的だったのは、差し色としてあしらわれた鮮やかなイエロー使いです。

八掛、帯揚げ、帯締めのイエローが、フラワーモチーフのキモノに花を添えます。
ベージュ地に墨色という都会的な色合いや可愛すぎない帯でトーンを抑えることで、ワンピースのような着こなしを実現し、彼女のクールな表情と相俟って、ランウェイを歩く姿が凛々しく映りました。

姉御的空気全開で登場したのは、大黒摩季さん。

竜巻絞りを施した貴重な大島紬は、ブルーパープル×ピンクが、格好良くて可愛い印象に。ヨーロッパの文様をアレンジした帯を合わせたスタイルには、やはりパワフルさも健在です。

続いて登場した仁科亜季子さんの品格が、会場の空気を一気に緩めます。

梨園出身の彼女にとって馴染みの薄いコーディネートに、「72歳にして新境地です」と語る様子が本当に嬉しそうで、楽しそうで、観ている者が思わず笑顔になるキュートさでした。

動きのある大胆な花モチーフのキモノに、花紋様の帯を重ねて、小物で黒を挿し色に。透け感あるクラシカルな羽織を手に、素敵な笑顔です。

そして、最後は高橋克典さん。

格好いいのは当たり前、といった風格です。その上、トークがお上手で、「刀がないのが不安」とこぼすなど、お茶目な一面も。

「とっぽく（＝気障で不良じみているさま）着たい」という言葉通り、破れたり太さが変化したりする大胆かつ繊細な縞格子を粋に着こなします。首にはチーフ代わりの帯揚げ。キモノの熟し方をこんなにも自然に体現されるのは、さすがの一言です。

不断の装いに色や柄を少し足したり引いたりすることで、印象をがらりと変えられるのもキモノならでは。

合わせる小物や半衿、足袋などにちょっとした遊び心を施す際のご参考に。