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着物の新しい形、守るべき伝統 「WORLD KIMONO SNAPS」 ‐ NEW YORK ‐

着物の新しい形、守るべき伝統 「WORLD KIMONO SNAPS」 ‐ NEW YORK ‐

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すべてにおいて最先端を意識する街、ニューヨーク。着物を通して出会う人とのつながりと、世界に着物の新しいイメージを発信するすばらしさを綴ります。

日本でウェディングの仕事に関わっていたので着付け師の方々と出会う機会は多かったのですが、そこですばらしい着付けの師匠と出会い、お稽古をしていただくことになりました。
彼女は、着付けの技術はもちろんのこと非常に広い知識を持たれ、かつ「着物はもっと自由でもいい」という考えで、新しい着物の着方を柔軟に受け入れアレンジしていくような方でした。
彼女からお稽古を受けてしばらく経ったある日、彼女は「もうお金払ってお稽古に来なくてもいいレベルになったよ。おさらいしたい時にいつでもおいで。」と言うと封筒を出して私に差し出しました。
「今までのお稽古代とっておいたの。これで上質な浴衣を仕立てなさい。自分の娘や孫に受け継げるようにね。」
私の着付けの原点はすべて彼女からです。
いかに着物を洋服を着るように着付けるか、紐は極力減らし、力を入れるタイミングと抜いても良いタイミング、そして着崩れないようにするか。
技術だけじゃなくどうやって着物を受け継いで、残していくか。
着物は世代を超えて伝えていかないといけない、と教わりました。
NYに来てから着付けを頼まれるタイミングが増えました。
ヘア、メイク、着付けを全てプロフェッショナルにこなせる人が少なかったからという理由ですが… Ayaka mayというパフォーマンスアーティストに、渡米3日目には着付けをしていました。
その後、彼女からの紹介で着物関連のビジネスをしている方に出会いました。
私の技術を信頼し任せてくださっていた方ですが、その磨かれたセンスにはいつも驚かされました。
海外ではなかなか出逢うことができない上質な着物や帯を揃え、時には「この着物には真っ黒の帯がいい。帯を裏返して使いなさい。お太鼓からチラッと覗く金糸が美しいんだ。」などとアドバイスをいただきました。
新しい着物のスタイリングに学ぶことがとても多く、そしてそれは私の師匠の「着物はもっと自由でもいい」という言葉ともリンクしていました。
NYに来てからはとにかく多くの作品撮りをたくさんのフォトグラファーと行いましたが、アメリカ人の着物に対するイメージは、芸者やエロティックなものが多かったように思います。
よく「セクシーな写真を着物を使って撮りたいから一緒に撮影しよう」などとフォトグラフファーから言われたりもしましたが、「着物を使ったセクシー」というイメージに嫌悪感を持っていたのでお断りしていました。
そんな中で、自分で着物を使った新しいスタイルを作りたいと思うようになっていきました。
「着物=セクシー」や「Geisya」しか知らない世界の人のイメージを変えたかったのだと思います。
そしてフォトグラファーのレジェンド・William Coupon氏と出会い、「着物で撮影したい」とお願いすると快諾してくれました。
その時のモデルは裸に着物を羽織っただけだったけれど、まったくエロティックではないアートとしての写真、彼だからこそできた作品となりました。
その後、もっとクリエイティブなスタイリングもトライしてみようと日本から持ってきた自分の着物とドレスやスーツなどを組み合わせてスタイリングし、雑誌に掲載。
その作品を見た周りの反応が非常に良く、私のクリエイティブ願望がどんどん増していきました。
ある時ずっとファンだったLyn Slater(大学教授にしてモデル・VOGUEなどにも載る有名人)にNYファッションウィークのバックステージで遭遇。
前々から彼女のスタイルが大好きで「コラボしたい!」と連絡するまさにタイミングを見計らっているところだったのです。
Lynに「あなたのファンでコラボレーションしたいとも思っていたの!」と話すと、彼女は「じゃあメールしてね」と残し、その後のメールでのやり取りで、どんなスタイリングでメイクをイメージしているか話した後、撮影を快諾してくれました。
撮影時に彼女と話して分かったことは、彼女は、私のような無名のアーティストに必ずしもいつも快く協力してくれるような人ではないということ。
悪い意味ではなく、彼女もエロティックな着物のイメージは快く思っておらず、いくら彼女の洋服とのコラボとはいえ、着物が日本の何たるかを分かっていない人と撮影をするつもりはなかったということでした。
メールで細かくスタイリングのイメージを聞かれたのはこのためだったのか…と分かった瞬間でした。
NYに来て5年、今は着物のクリエイティブスタイリングで撮影をする機会は減りましたが、着物を通して得たたくさんの”GIVE”な方々との出逢いは、本当にすばらしい財産となりました。
そして私も、NYへ来る前に師匠が一緒に選んでくれた訪問着でメトロポリタンオペラなどに行き“Beautiful”「写真を撮らせて!」と言ってくれるニューヨーカーを見て、着物は世界で最も美しい民族衣装なのだとうれしくなります。
NYもあたたかくなってきたのでそろそろ着物でどこかへ出かけたいですね。
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